最後はスタッフの「経験値」が物を言う
気になる岩沼屋の1泊2食の宿泊料金だが、一般的な大江戸温泉の施設が1万円弱~なのに対し、1万3000円程度~(人数や条件により異なる/税抜き)と少々高めだ。とはいえ、施設のデラックス感やオールインクルーシブなどのお得感を考えると決して高い印象はない。一方で、老舗の大型施設ということで、老朽化した設備や客室の快適性向上も課題といえるだろう。
もともと秋保温泉は東京からの集客力も高かったエリアだが、このご時世、全国ブランドとはいえ、地元・仙台が主要マーケットになっていることは同地の他施設と同様だ。
そもそも、大江戸温泉物語ではブランドのスケールメリットを考慮した集客バランスを重視する。「マイクロツーリズム」というワードに代表されるように、いまは自治体でもエリアを限定したキャンペーンなどが行われており、近隣・隣接エリアからの集客が欠かせない時代といえる。
岩沼屋では、コロナ禍収束を見越した想定もしている。山田氏によると「東北を面とした大江戸ブランドのゲスト回遊」も視野に、2~3割が東京からのゲストというバランスも想定しているという。
1年半のコロナ禍に対峙する運営ノウハウの蓄積で、大江戸温泉物語に限らず宿泊施設の感染症対策はベテランの域に達している。宿泊施設そのものに限っていえば、歴史上これほどまで除菌、消毒されている時もなかったのではないだろうか。
コロナ禍での厳しい船出となった東北の宿であるが、出向いて感じたのは経験値が豊富な従前からのスタッフ力が輝いていることだった。やはり宿泊施設はハード・ソフト、そしてヒューマンパワーで決まることを改めて感じた。