駐日大使起用は、ペロシ氏はじめ党重鎮や支持基盤の労組がようやく賛同したからだが、国務省関係者や外交官の間には不満もくすぶっている。主要メディアの国務省担当記者はこう分析する。
「日本は今や、クアッド(日米豪印戦略対話)を推し進める米外交の主軸だ。かつてはマイク・マンスフィールド(元民主党上院院内総務)やウォルター・モンデール(元副大統領)といった政界の大物がシンボリックな意味で駐日大使に任命された例があるが、最近では日米首脳のホットラインが確立して、大物大使は要らなくなっている。その結果、西欧駐在大使と同じように選挙の論功行賞のポストになっているのが実情だ。
今回の人事も、エマニュエル氏の能力や適性ではなく、どちらかと言えば本人のわがままを聞き入れて決まったもの。同氏は大物だけにずけずけ物を言うし、独断専行と寝業で政界をうまく泳いできた人物だから、温厚なブリンケン国務長官などでは相手にならないだろう。だから国務省は戦々恐々だし、受け入れる日本政府も苦労するのではないか」
同氏の起用が日米関係に吉と出るか凶と出るかはまだわからないが、早くも求心力を失ってきたバイデン政権を象徴する人事であることは確かだ。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)