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ラッシャー木村「こんばんは事件」なぜズッコケ? 言語学者がエッセイで検証

川添

身近にある言語学の話題をユーモアたっぷりに綴った川添愛さん

【著者インタビュー】川添愛さん/『言語学バーリ・トゥード Round1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』/東京大学出版会/1870円

【本の内容】
《言葉の理解のために、文脈の理解は不可欠だ。/たとえば、誰かが「時は来た!」と言ったとしよう》。こんな文章から本書は始まる。《もし予備校の熱血教師が受験目前の生徒に向かってそう言ったならば》などの事例を挙げつつ、その一方で、として、《もしプロレス好きの人が酒に酔ってそう言っているのであれば、単に橋本真也のモノマネをしている可能性が高い》と続ける。こんな具合に言語学と身近な話を行き来しながら言語学の奥深くへと笑いとともに展開していく楽しくて刺激的なエッセイ集。

色物枠ということにして書きたいことを書こうと

 言語学者が書いた本、というと何やら難しそうに感じるが、とにかく面白い。ぐふふと変な笑いが漏れてしまうので注意が必要だ。

『言語学バーリ・トゥード』が連載されていたのは、東京大学出版会のPR誌『UP』である(いまも連載中)。

「『UP』の執筆者はほとんど大学の先生なので、学術的な内容が多いんです。連載の話をいただいたとき、私は研究所をやめてフリーランスになっていたこともあって、学術的じゃない、箸休め的に読めるものにしようと思いました。『色物枠』ということにして、自分が書きたいことを書こうと」

 タイトルの「バーリ・トゥード」はポルトガル語で「何でもあり」を意味し、格闘技の1ジャンルでもある。

 プロレス好きだと言う川添さんらしい選択だが、連載の初回に「バーリ・トゥード」の説明がなかったことに、同じ連載陣である宇宙物理学者のSTO先生からクレーム(?)がつくというプロレス的展開に。そのことをまた連載の中で紹介、2人の共通の担当編集者であるT嬢も時折顔を出す、という流れで、変幻自在な現在のスタイルが出来上がっていった。

「言語学者のイメージって人によっていろいろだと思うんですけど、まず言われるのは、『外国語をどれぐらいしゃべれるんですか』ですね。私の専門は日本語なんです、と返すと、『じゃあ、正しい日本語をご存じなんですよね。こんな言葉を使ってちゃ恥ずかしいな』とか、『メール書くの緊張しちゃうな』とか言われます。全然そんなことはなくて、私自身、ふだんからラ抜き言葉も使うんですけどね」

 川添さんの専門である理論言語学では、日本語の正しさではなく、自然か不自然かが観察の対象になるそう。

 どういう文を自然だと思い、どういう文を不自然だと思うか、境目が重要になる。見極めるときの手がかりにするのは自分自身の感覚で、そこから仮説を立て、ほかの用例についてもそれが正しいかを検証していく。

「直感が大事なんですけど、頭の中で考えたことをそのまま論文にするわけにはいかないので、いろんな人に訊いて、批判も受けて、フィードバックを受けながら、言葉についての理解を深めていく感じですね」

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