だけど、仲よしの秘書や番記者との雑談で二階さんの名前を出すと、10人中10人が「もう充分でしょ。やるべきことはやったでしょ」とため息交じりなんだよね。このところ永田町では、“コロナ禍選挙”をせずに引退を表明した70代の議員が何人も出たけど、「だよね~」といちいち納得よ。コロナ禍が落ち着いたら、時代が大変革することだけは確かなんだから。
そういえば、こんな話も。
実は私、ラジオの『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)を聴くことを日課にしているのね。その中で60代の姑が、30代の嫁が気に入らないと嘆いていたのよ。「ちっとも頼ってくれないんです」という姑に、回答者が「どんなことを相談されたいの?」と聞くと、「息子の好きな料理の作り方とかを教えたいのに、スマホをいじってるばかりで」と言うんだわ。
すると、相談者と同世代だという回答者の女性は大笑いしながら、こんなことを言ったの。
「あのね、気持ちはわかるけど、私たちが40代から下の世代に教えられることは何ひとつないということを、あなたは知るべきです。だって、ほとんどの料理は、初級者向けから本格料理人のレシピまでユーチューブに出ていて、とても上手に教えてくれるもの」
そうだ、そうだ! でも、
「世の中の仕組みや人づきあいのコツも何もかも、あなたが人生で会得してきた知恵は、通用しないと思った方がいい」とまで言われたら、正直、私も相談者と一緒に腰から下の力が抜けたわよ。ひと昔前までは“おばあちゃんの知恵”が重宝されてたのに、それが無力だなんて、あんまりじゃないの。
で、その後、考えた。これといった成果もなく、43年もライター商売をして、19年連れ添ったのはオス猫の三四郎だけ。社会のはぐれ者の64才の私が下の世代に教えられることは本当に何もないのだろうかと。
う~ん。そうだなぁ。今日は大失敗しても、息を潜めていれば明日こそは何とかなるかも。明日はダメでも明後日は……ってことくらいかしらね。ちなみにオバちゃん最大の失敗は結婚詐欺師に引っかかったこと、かな。えっ、その話、聞きたい? ハイ、お後がよろしいようで。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2021年9月23日号