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【書評】弁護士が経験した19人の女性の物語 「自分らしく」のリアル

『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』著・南和行

『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』著・南和行

【書評】『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』/南和行・著/集英社/1650円
【評者】香山リカ(精神科医)

 女性から「結婚生活が苦痛なんです」という言葉をきく職業のトップ2は、弁護士と精神科医ではないだろうか。私も診察室で日常的にそのフレーズに接し、「真意はどこにあるのかな」と考えながら話を聞く。そして本書は、大阪の弁護士がこれまで経験した話を「19人の女性の物語」として再現したものだ。あまりにリアルで目が離せなくなる。

 私の目がひかれたのは、定年退職した夫がいまだに「夜の生活」を求めることに嫌悪感を抱き、離婚を思い立った60代妻の話。セックスレスに悩む妻も多いが逆もあるのだ、と驚いて先を読むと、夫は食事をしてお風呂に入ってテレビを見て、の続きでからだを求める。問題の核心は、ルーティーン化した生活そのものにありそうだ。

 また、多忙すぎる官僚との結婚生活の中で、夫の不倫疑惑、義母の過酷な介護で疲れきった妻がやさしい男性に出会った話も印象的だった。勇気を出して離婚を切り出したが、夫は弁護士を立てて拒否。やむなく女性は離婚訴訟を起こしたが敗訴してしまう。そこで女性が漏らしたひとことが、「結婚は、人生の罰ゲームなんですか?」。

 19人の女性の中には「カルト集団にのめり込む」などあまり同情できないケースもあるが、全体を通して浮かび上がるのは、結婚生活に安住して妻との人生を真剣に考えようとしない夫たちの姿だ。診察室でも感じることだが、いまどきの女性たちは子育ての最中も終わってからも「自分らしく生きたい」と望み、決して「夫婦は空気と同じ」などとは考えていない。それに気づかない夫が「仕事して生活費さえわたせば文句ないだろう」と思っていると、ある日、離婚を切り出されることもあるのだ。

「離婚だなんて、ウチの女房はそんなこと考えてないよ」と言う人が、いちばん危険だ。心やさしくいつもユーモアを忘れない弁護士が向き合ってきた女性たちの物語、ぜひひとごととしてではなく読んでみてほしい。あなたの結婚生活の今後の継続ためにも、必読の一冊といえる。

※週刊ポスト2021年9月17・24日号

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