世界一「薄い防具」をめぐるアツい論争(時事通信フォト)
個人の自由とプライバシーを尊重するアメリカで、セックス中の行為に法的規制がかけられるのは異例だが、州によっては望まない妊娠をしても簡単には人工中絶ができなかったり、エイズなど深刻な性感染症のリスクが高かったりするため、女性にとってコンドームという「薄い防具」の重要性は他国以上という事情もある。
反ステルシング法でカリフォルニアのセックス事情はどう変わるのか。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のある社会学者はこう見ている。
「今回できた法律は民法なので、違反したからといってレイプのように何年も刑務所に放り込まれることはないが、今後、例えば風俗嬢たちが客を相手に次々と賠償訴訟を起こすのは間違いないでしょう。妻が合意の下のセックスで、夫のステルシングを訴えるケースも出てきます。コロナの影響もあって別居する夫婦が急増していますから、相当な数の訴訟が起きるでしょうね」
カリフォルニアでは、ハリウッド・スターやプロアスリートなど、華やかな浮名を流し、一方でセックス・スキャンダルに見舞われるセレブも枚挙にいとまがない。有名人がステルシングで訴えられる日も遠くはなさそうだ。新語「ステルシング」は、押しも押されもせぬ法律用語となった。アメリカを揺り動かすLGBTQ文化がまた一つ「足跡」を残した。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)