よく聞いてみると、並べ立てているおいしい話には実現性がどこまであるかわかりません。攻撃している「誤り」も、その前に「野党の言うように、分配を言うだけでは成長ができなくなり、分配するパイもなくなってしまいます」と言っていますが、そもそもパイを小さくしたのは誰なのかという疑問が浮かびます。ただ、二者択一の構図の中では、disったもの勝ちという一面がなくはありません。
記者の質問を受けるとき、岸田首相は手元でメモを取っています。適度なうなづきも欠かしません。それによって見ている側は「この人は相手の話をちゃんと聞いているんだな」という印象を受けます。14日の会見でも、ある記者が「2点お伺いします」と前置きして質問を並べたら、わざわざ「2点というか3点かな」と笑って訂正しました。
ひとつひとつきっちり答えている印象を与えつつ、「今回の解散をなんと名付けるか」という質問はさりげなくスルーしたり、はっきり答えられないことについては「スケジュール感をしっかり示していくことが大事だと思います」と、とりあえず意気込みを示してお茶を濁しています。しかし、自信満々に言い切られると「何かやってくれそう」と思えてしまうのが、言葉の恐ろしさと言えるでしょう。
また、記者会見を見ると、岸田首相のいちばんの口癖は「しっかりと」のようです。「丁寧に」「全力で」なども、使用頻度は高め。気合いの表われなんでしょうけど、そういえば菅元首相もこのへんの言葉をよく使っていました。初々しさが残っているせいか、岸田総理の「しっかりと」は、今のところそれほど悪目立ちしていません。同じ言葉でも聞く側の印象がこれからどう変わっていくか、引き続き気にかけていきたいところです。
この3つのコツを会得すれば、仕事の場面で、あるいは家庭内で、「いいことを言っている人」と思ってもらえるはず。ただ、岸田首相に対する国民の評価と同じで、本当の尊敬や信頼につながるかどうかはまた別です。背景や周囲の顔ぶれも含めて、国のリーダーにふさわしい人かどうか、時節柄しっかりと丁寧に全力で見極めましょう。