時短営業が解除された大阪・ミナミの繁華街を歩く人たち=10月25日午後、大阪市中央区(時事通信フォト)

時短営業が解除された大阪・ミナミの繁華街を歩く人たち=10月25日午後、大阪市中央区(時事通信フォト)

「A店の奥さん(現店主の母)もかわいそうに。息子はすっかり働く気を無くしていているし、時短要請が終わり(協力金の)お金がもらえなくなったら終わりだ、と会合に来ては泣いていました」(石橋さん)

 多くの店舗が、石橋さん同様に協力金や補償金をしっかり温存していたが、中には「協力金バブル」に浮かれ、海外旅行に行ったり車を買ったり散財する事業主がいたことは筆者も取材したし、これまでも週刊誌などでも指摘されてきた。そんな人々がいるために、飲食店業界の評判が悪くなるとこぼしながら、別の業界にも暗い影を落としつつある、と指摘するのは、B店に不動産物件を貸していた地元の不動産店経営・福永和雄さん(仮名・60代)である。

「B店は確かに人気店で、ちょうどコロナが流行る直前に2軒目を出すというので、うちで契約してもらいました。ところが、すぐコロナで店の営業もままならなくなった。営業しないのかと言っても、2軒目は看板すら出さないし、本店の営業もまるでやる気なし。まあ、家賃だけは入るのでこちらとしても文句は言えないけど、そりゃ叩かれますよ」(福永さん)

「叩かれる」というのは、コロナで休業や時短営業をせざるを得なくなって飲食店に支払われた金が、いくらなんでも多すぎるのではないか、といった一部市民による問題提起である。政府は迅速な支給を目指し、一定の基準を満たす形式の書面さえ整っていれば、給付金や協力金の申請について首を横に振ることはなかった。困窮した人の元へ迅速に現金を届けることが大事、という政府の姿勢を強調していたのである。

 ネットを利用した申請では遅延やシステム不備もあったといわれ、また、こうした政府の姿勢を悪用した詐欺事件も全国で多発し、何名もの逮捕者を出しているが、ネガティブな話は尽きず「飲食店ばかり金をもらってずるい」という風潮が出来上がっていることも確かだ。

「B店は、2軒目は届出だけ出して、実質営業もしていないのに、協力金を2店舗ぶんもらっていました。それがないと私のところの家賃も支払えないわけで。このまま店を再開するのならいいけど、B店のオーナーさんにやる気出してもらわないと、この先どうなることか。正月だって乗り切れないかもしれない」(福永さん)

協力金を浪費し続けてきた飲食店の行く末

 石橋さんにしろ、福永さんにしろ、協力金制度を悪用する人間がけしからん、という気持ちは抱いているようだが、それ以上に気がかりなことがある。そうした店舗がこれから追い込まれ、その余波が自分にも及んでしまうのではないか、ということへの強い危機感だ。彼らにはまだ、漠然としかつかめていないこれからの危機について、東京都内で居酒屋店を営む森山優一さん(仮名・40代)が、業界全体の問題であると指摘しつつ解説する。

「月に百何十万という協力金が貰えて、それが何ヶ月も続いて、金銭感覚がおかしくなった人は少なくないです。ずっと大変な思いしていたから、協力金は国からの慰謝料代わり、なんていう人もいて、その気持ちだけは、ある程度理解もできました。でも、ほとんど営業することをやめ、協力金を浪費し続けてきた飲食店は、コロナが終わると死にます。客離れも進み、前と同じみたいに営業ができるわけない。まともにやってきた店なら、今がどういう状況かわかりますから」(森山さん)

 森山さんが指摘している「状況」とは、営業せずにいた飲食店は、単純に長い間「サボっていた」から、商売人としての勘が取り戻せなくて苦労をする、という意味だけではない。飲食業界にとっては、これからクリスマス、年末という一年のうちでも最も大事な掻き入れ時に突入するが、大手企業では忘年会の開催などを今なお制限しているし、この流れは年明けまで続くものと考えられる。そうすると、いくら「通常営業」に戻ったと喜んだところで客は来ず、店の経営は依然として厳しいままだという前提を忘れてはならないのだ。

関連記事

トピックス

浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン