口腔内細菌Streptocuccus anginosusの画像
この4種の細菌(S.koreensis、S.anginosus、S.moorei、P.stomatis)は大腸がん患者の唾液と便の両方に大量に存在。これらは口腔に常在する細菌であるにもかかわらず、便にも高い量で存在しており、まずは口腔から移行した可能性が示唆され、中でもS.mooreiは早期患者に比べ、進行大腸がん患者に多量に存在していたため、がんの発症だけではなく、進行にも関与している可能性がある、と判明した。
「見つかった4種の口腔内細菌は直接、大腸がんを発生させたり、進展させるのではなく、発がんさせる腸内細菌叢を作り出す働きをしている、と考えています。悪玉菌が活動するためには周囲に複数の特定の菌が必要で、細菌叢のバランスが崩れることにより、悪さを始めます。予防のためにも、大腸がんと関連する細菌を腸に定着させないよう日常の口腔ケアと定期的に歯科で管理してもらうことが大切です」(杉浦教授)
今後は口腔内細菌叢解析による大腸がん診断法の確立を急ぐ。簡易な唾液のPCR検査で、大腸がんの早期発見が可能になる日も近いだろう。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2021年11月19・26日号
杉浦剛・鹿児島大学歯学部顎顔面疾患制御学分野教授