スポーツ

広島で日本一3回「名将・古葉竹識監督」の礎となった南海時代の経験

1979年、日本一となり、ギャレット(左端)らに胴上げされる古葉竹識監督(時事通信フォト)

1979年、日本一となり、ギャレット(左端)らに胴上げされる古葉竹識監督(時事通信フォト)

 現役生活を1球団で終えるか、ボロボロになっても他球団に移籍してプレーを続けるか──。選手生活晩年、スター選手はそんな悩みを抱える。後者を選択したことで、指導者としての引き出しや人脈が広がり、のちに“名将”と呼ばれたのが古葉竹識さんだった。

 11月12日、広島の監督として優勝4度、日本一3度に導いた古葉竹識さんが死去した。85歳だった。古葉さんは現役時代、2度の盗塁王に輝き、1963年には巨人の長嶋茂雄と首位打者争いを演じた。オールスターに3度出場し、2度もMVPを獲得した生え抜きのスターだったが、1969年は入団以来最少の68試合出場に終わった。引退も頭に浮かんだ33歳のベテランに他球団から声が掛かった。プロ野球担当記者が話す。

「南海の選手兼任監督に就任したばかりの野村克也さんが古葉さんに目をつけ、城野勝博とともに国貞泰汎との1対2の交換トレードで移籍させました。古葉さんは新天地で2年過ごし、引退翌年に二軍コーチ、翌々年に一軍コーチを務めた。南海時代を通じて、野村さんとともにヘッドコーチであるドン・ブレイザーの“シンキング・ベースボール”に感銘を受けたそうです」

現役時代の古葉竹識さんのバッティング(時事通信フォト)

現役時代の古葉竹識さんのバッティング(時事通信フォト)

 大リーグのカージナルスやレッズなどでプレーしたドン・ブレイザーは1967年、南海に入団。2年連続ベストナイン、3年連続オールスターに出場し、37歳の1969年限りで引退。そのオフ、野村氏はブレイザーのヘッドコーチ就任を条件に選手兼任監督を引き受けた。その時、ちょうど古葉氏が移籍してきた。

 根性重視の精神論が横行していた日本球界で、ブレイザーは緻密な野球を説いた。捕手が出すサインを内野手も見て、1球ごとに守備位置を変える。エンドランを成功させるために一塁走者が偽走し、セカンドとショートのどちらが二塁ベースに入るかを確認した上で、空いた方向に打たせるなど考える野球をチームに浸透させた。

「今ではどの球団でもやっていることですが、その先駆けがブレイザーでした。ブレイザーの“シンキング・ベースボール”を発展させて、野村監督が1990年代に“ID野球”でヤクルト黄金時代を築いたことは有名ですが、その前の昭和50年代のカープ黄金時代も実はブレイザーの教えが影響していたわけです。

 古葉監督は広島で高橋慶彦や山崎隆造、正田耕三という足の速い打者をスイッチヒッターに転向させて成功していますが、ブレイザーの影響だと語っています。ブレイザーは投手の癖を読むことにも長けていましたが、これも広島の機動力野球が生まれる原点になっているのでしょう」

関連キーワード

関連記事

トピックス

「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト
人の出入りが多く流行っていたという火災があったサウナ店
《夫婦が閉じ込められ…》月額39万円の高級サウナ店での火災でサウナーたちに広がる不安 彼らはなぜ\\\"避難シミュレーション\\\"を議論するのか
NEWSポストセブン
今年2月に直腸がんが見つかり10ヶ月に及ぶ闘病生活を語ったラモス瑠偉氏
《直腸がんステージ3を初告白》ラモス瑠偉が明かす体重20キロ減の壮絶闘病10カ月 “7時間30分”命懸けの大手術…昨年末に起きていた体の異変
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《独占スクープ》敏腕プロデューサー・SKY-HIが「未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し」、本人は「軽率で誤解を招く行動」と回答【NHK紅白歌合戦に出場予定の所属グループも】
週刊ポスト
世間を驚かせたメイプル超合金のカズレーザー(41才)と二階堂ふみ(31才)の電撃“推し婚”
【2025年・有名人の結婚&離婚を総決算】何かと平和な「人気男性タレントと一般女性の結婚」、離婚決断が女性からの支持につながった加藤ローサ
女性セブン
米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン