磯焼けで中身のなくなったうにが2か月でおいしいうにに変貌。「豊後の磯守」というブランドで出荷される(写真/ウニノミクス提供)
こうした状況下でウニノミクスが目標として掲げたのは磯焼け対策と藻場の保全を経済的に自立しながら叶えることだった。
「目的を遂行する手段として着手したのが、うにの畜養です。具体的には、まず異常繁殖した“厄介者”のうにを漁業者から買い取ることで磯焼け対策活動を促進します。そしてそのやせたうにを畜養することで地域に新たな産業と特産品を生み、海の環境保全と地域漁業、経済の持続的発展を同時に叶えることができる。この循環型ビジネスに、国内外の磯焼け地域で取り組んでいます」(山本さん)
さまざまなメリットを生み出すウニノミクスは、世界初の磯焼け対策のうに養殖事業だ。成功のポイントは、何よりも間引いたうにをおいしいものに育てること。そのために注力したのは「エサの開発」だった。
「うには雑食かつ食欲旺盛。エサとなる海藻がなければ死んだ魚でも食べてしまいます。おいしい昆布の育つ海で育つうにはおいしいといわれる通り、うにの味はエサで決まります。そこで水産先進国であるノルウェーの技術を用いて、持続可能な方法で収穫された食用昆布の端切れを主原料とし、うに本来の味を引き立てることに特化した専用飼料を開発しました。昆布の旨みと栄養たっぷりの飼料を用いることで約2か月という短期間でおいしいうにを育てることが可能となりました」(山本さん)
懸命の取り組みが実を結び、そのおいしさは漁業者たちも認める高クオリティーなものとなった。
「めざすのは磯焼け対策および藻場保全と畜養うにの安定供給を両立させることです。日本は世界のうにの8割を消費するうに大国ですが、近年は諸外国のうにのニーズが高まり、これから各国との争奪戦が始まることも予想されます。今後はウニノミクスを全国の磯焼けに苦しむ地域に展開して、おいしいうにを育てながら環境保全に貢献したいと考えています」(山本さん)
※女性セブン2021年12月9日号
ノルウェーの技術を用いて作った特別なエサ(写真/ウニノミクス提供)