国際情報

五輪ボイコットが怖くて「マトリックス」上映を認めた習近平

思わぬ朗報?(AFP=時事)

思わぬ朗報?(AFP=時事)

 シカゴ外交問題評議会が8月に公表した世論調査では、アメリカ国民の52%が台湾有事の際には米軍を出動させるべきだと考えている。米議会には台湾有事法案が相次いで上程され、米議員団の訪台ラッシュが続くなど、中国との関係はいよいよ険悪になっている。中国の習近平・国家主席は青筋を立てて怒っているに違いない。

 そんな冷え込む米中関係のなか、中国政府の顔色を窺ってだんまりを決め込んできたハリウッドに朗報が飛び込んできた。キアヌ・リーブス主演の大人気シリーズ最新作「マトリックス レザレクションズ」が中国国内で上映される見通しになったのだ。このほど習氏直轄の中国共産党国家電影局が許可した。

 1999年に公開されて大ヒットした「マトリックス」第一弾は、われわれが生きているこの世界が実は人間を支配する機械文明によって作られた「仮想現実(マトリックス)」だという設定で世界に衝撃を与えたことはご存じの通り。特殊効果をふんだんに使って「映像革命」を巻き起こした。「レザレクションズ」はその第四弾。2020年2月にクランクインしたが、新型コロナウイルスの影響で制作は一時中断。同年8月にドイツで撮影が再開され、11月にクランクアップした。

「制作費はざっと1億4500万ドル(約164億円)。配給するワーナー・ブラザーズは全世界で制作費の約4倍、5億8100万ドルの興行収入を目指している」(ハリウッド関係者)

 当初、米国内の公開は2022年4月とされていたが、4か月前倒しして今年12月22日(ストリーミングサービスHBO Max同日公開)に早まった。日本公開はそれより5日早い12月17日が予定されている。

 前出のハリウッド関係者は、「前作でも北米興行収入は53%で、47%は外国で稼いだ。人気のある日本上映で弾みをつけ、中国市場への誘い水にしようというのが当初からワーナー・ブラザーズの戦略だった」と明かす。

米中関係は冷え込んだまま(AFP=時事)

米中関係は冷え込んだまま(AFP=時事)

 そこに起きた米中冷戦だから関係者は気が気ではなかったはずだが、中国はあっさり上映許可を出した。同シリーズの前3作は許可されていないのに、だ。中国が一年間に上映許可する外国映画は30本程度しかない。不許可の基準は中国政府や共産主義および中国民族を著しく誹謗・批判することや、露骨な性描写、監督や俳優による反中国的言動などとされている。

 最近では、「プーと大人になった僕」(2018年)が、主人公の「くまのプーさん」がSNSでしばしば習氏を揶揄するニックネームとして使用されることから上映禁止になった。また、アカデミー監督賞に輝いた中国籍のクロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」(2020年)が、同氏が過去に中国批判していたという理由で検閲を通らなかった。

「マトリックス」の過去作は、海賊版DVDが中国で爆発的に売れた“実績”がある。日ごろの鬱憤を晴らすアクション映画は中国では人気があるが、同時に、マトリックスの世界観が、どことなく人民を搾取する一党支配のお国柄を連想させることも無関係ではないだろう。これまで上映が許可されなかったこともうなずける。

 では今回なぜ、中国は上映を許可したのか。配給元も米メディアの質問には一切コメントしていないが、ハリウッド事情に詳しいロサンゼルス地元紙のベテラン記者はこう解説している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン