岸田首相はどう動く(写真/JMPA)
さらに首相のライバルで安倍氏が持つ「総裁カード」の高市早苗・政調会長の出番も封じられた。
総選挙後最初の政治課題となった18歳以下の子供1人10万円支給をめぐる自公交渉がそれだ。与党内の政策調整は通常であれば政調会長会談を経て幹事長会談という手順を踏むが、今回は岸田首相の指示で政調会長会談を飛ばしていきなり幹事長会談で決着させ、茂木氏に花を持たせたのだ。
「ライバルの高市の出番は作らせないというのが首相の意向だった」(岸田側近)
高市氏は自公の合意内容に「たいへん不公平な状況が起きる」と反発したが、黙殺された。
そして安倍派の跡目問題にも手を突っ込んだ。
総選挙後の党役員人事では、安倍派の福田達夫・総務会長の下に総務会長代行として政治巧者のベテラン・森山裕氏、総務会長代理として小泉進次郎氏をいずれも「総裁枠」で起用し、若い福田氏を支えるシフトを敷いた。
「派内で安倍さんと対立するプリンス福田をサポートして“安倍から福田へ”と最大派閥の世代交代を促す狙いを含んだ人事」(自民党閣僚経験者)と見られている。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏は一連の動きを「岸田首相は明らかに変わった」と指摘する。
「首相は総選挙を乗り切ったことで自信を持ち、“安倍のイエスマン”から脱皮した。自民党ではこれまで党を仕切ってきた麻生太郎、二階俊博といった長老たちが力を失っていき、世代交代が進む。首相はそれを促すことで、麻生、二階に支えられて長期政権を誇った安倍氏も旧世代と一緒に表舞台から消えてもらい、政治の転換を図ろうとしている」
安倍氏にすれば、最大派閥の領袖になった途端、岸田首相から“あなたの出番はもうない”と包囲網を敷かれたのだ。
※週刊ポスト2021年12月24日号