特産品

高値がつくシラスには、エビの幼生やオキアミといった混ざりものが少ない。手に持ったときに冷えているかどうかで鮮度も確認できる

 出航から約1時間半が経った頃、魚群を見つけた藤音丸が網を入れた。シラスはサイズが小さいほど価値が高いとされているので、漁に使う網の目が極めて細かい。そのため、水の抵抗も強烈。2艘の網船はまるで止まっているように見えるほど、ジワジワと進む。一度網を入れたら1時間以上、長ければ2時間も引く。それから、網に溜まったシラスを手船に引き上げて回収。一杯になったカゴを共同運搬船で持ち帰り、新鮮なうちにセリにかける。

 その日の最初の水揚げは、午前9時過ぎ。記者が同乗した船だ。港では仲買人たちが待ち構えていた。ひとカゴに25kgのシラス、そのカゴを5つ重ねてクレーンで引き上げる。すぐさま仲買人たちが駆け寄ってきて、サイズや鮮度、混ざりものの有無に目を光らせた。同じ入札額なら先に札を入れた仲買人が勝つので、動きが早い。入札開始から落札まではたった数分。成立した価格は、リアルタイムですべての漁師のスマホに送られる。

「それがポジティブな競争意識を生むんですわ。俺もやったろかい、ってね」(岡さん)

この生シラスはセリ場から徒歩10秒、漁港内にある「きんちゃく家」で丼になる。もともとは港で働く人たちのための食堂だったが、生シラス丼が人気を博して、年間6万人もの一般客が訪れる人気店になった。

「普通の生シラス丼は酢飯を使ったり、生姜を混ぜますが、うちのは白いご飯だけ。シラスに臭みが一切ないからできるんです。シラス本来のプリプリの食感と甘みを堪能してください」

 きんちゃく家の土居弘明さんは自信満々。もちろん、一口食べて納得。こんなにも濃厚かつ爽やかなシラスは初めてだ。脱帽の味わい、ごちそうさまでした。

撮影/杉原照夫(WEST)

※女性セブン2022年1月1日号

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