しばしば名言も飛び出した
栄一が国債と鉄道債を購入して得た利益は、日本に帰国する大切な資金となった。多くの人の役に立つ「社会資本」の意味がここで伝わるのである。
栄一と話したことで名言が出た人物もいる。幕府奥詰医師の高松凌雲は、栄一と公務の合間にパリの街を見物し、戦で傷ついた兵士を治療する廃兵院を訪れた。
「医者はどこにいようが、相手が誰であろうが、平等に正しい治療をするのみ。その真心を、この地で見つけられた気がする」
高松凌雲は、のちに民間救護団体の前身といわれる同愛社を創設。困窮者の医療に尽くした。医療の本質を語る言葉は、今に響く。
秘密その3は、「青春」であり続けたこと。大河ドラマ歴代最長寿の主人公・渋沢栄一の人生の中で『青天を衝け』は、経済人として大事を成し遂げる晩年よりも、若く未熟だった時代を長く描いた。時代の荒波に翻弄され、失敗もする姿のほうが、やっぱりイキイキして見えたし、共感もされたはずだ。
最終回のタイトルは「青春はつづく」。コロナ禍の息苦しい日々に毎週、青空を見せてきたドラマの「青春」を確認したい。
『青天を衝け』はロケ地のすばらしさでも魅了した