好きな本は『哲学とは何か』(撮影:黒石あみ)
書籍といえば、昨年こんなことがあった。ファンから「好きな哲学者は?」と訊かれた彼女が、Instagramのストーリーで哲学者ジル・ドゥルーズと精神科医フェリックス・ガタリの最後の共著『哲学とは何か』を紹介したのである。なぜ『哲学とは何か』を選んだのだろうか。
「最初に買ったのはインタビュー映像のDVDが付いている『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』でした。映像を見てみるとすごく断定的な語り方が多くて、けれど哲学者の方は自分の意見をブレずに私たちに教えてくださるんだなと思ったんです。それに解説の冊子もあるので、時代背景を考慮するとまたインタビュー映像の見え方が変わる。その流れでドゥルーズに興味を持って『哲学とは何か』を買いました」
哲学や思想などの人文書を読むことについて、玉城ティナはこのように魅力を説明する。
「色々な人の考えに触れることができるというのが、やっぱり私が本を読む一番の理由なんです。特に哲学者の考えに触れたときに、たとえば何か作られているものを砕いてパーツごとに説明してくれると、じゃあ自分だったらそのパーツをどのようにまた作り直していけるだろうかと考えるんですね。哲学者の考えを通して、何かを作り直す作業が自分の中に返ってくるといいますか。
来年公開される『アクターズ・ショート・フィルム2』というオムニバス短編映画で、初めて監督をやらせていただきました。脚本も担当した『物語』という作品です。今年撮影をしていて、撮影前に色々な監督の映画論やエッセイを読んだのですが、自分なりに糧になったものがたくさんありました。
映画作りにおける技術的な面もそうですけど、やっぱり映画それ自体を分解して言葉にしている本の方が私には大きな示唆を与えてくれました。そういう意味で、思想書といいますか、何か作られているもののパーツや歴史に触れることができる本というのはすごく魅力的だなと思いますし、そうした本は自分の仕事にもプラスになっていると思います」
哲学や思想に触れることは、普段あまり意識することのないものごとについて、あらためて見直すきっかけにもなる。その経験は仕事や日常生活の様々な場面で活きてくるはずだ。そうしたことを踏まえて玉城ティナの活動に接してみると、彼女の表現がこれまでとは少し違う角度から見えてくるかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)
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