歌舞伎俳優の変顔といえば、松也も出演した『半沢直樹』が思い出される。そこでは香川照之、市川猿之助の熱い変顔が強烈な印象を残した。が、鈴之助松也は、「まったり」だけに、おとぼけ顔だ。
だが、会社に鬼面党の鬼塚(六角慎司)がいることが発覚。黒い鬼の面をつけてる時点で鬼塚は怪しすぎるが、会社でちっちゃな悪事をするのを見た鈴之助は、「貴様、鬼面党だな!」とついに必殺技「真空斬り」で成敗! 真空斬りは、刀ではなく竜巻をおこして敵にぶつけるという凄技だ。やっと、きりっとした顔ができてうれしそうだったな、鈴之助…。
松也は、2009年から続けてきた自主公演『挑む』シリーズの最終作として昨年、新作歌舞伎の題材に赤胴鈴之助を選ぶなど、この役への思いはひときわ強い。とぼけた笑いと変顔とともに、令和の視聴者に父も演じた剣士の名前と姿を焼きつけたい。そんな思いが見て取れる。
ドラマでは、どうやら、宿敵・銀髪鬼(近藤芳正)も現代の一戸建てでちんまり暮らしながら、「しかしもかかしもあるか」と鬼塚らを使って悪事を企てている様子。「涼しい顔の鈴之助!!」とダジャレを飛ばしながら、成敗できる日がくるのか。なんとなく、結末もまったりしそうな気もするけど。