被害者の学生2人は共通テストの受験生だった。試験開始1時間前に会場を訪れようとした矢先に起きた刺傷事件。重傷ではなかったものの、心に受けた傷と動揺の大きさなどは計り知れない。現場を目撃した男性が語る。
「門の外側と内側で倒れている人がいましたが、血まみれというわけではなかったし何が起こっているのかすぐに判断できませんでした。しかし学生服を着た小柄で眼鏡を掛けた男性が『おれは東大を受験するんだ!』と叫びながら自分のお腹あたりに包丁を突き付けているのを見て驚きました。駆け付けた大学の職員みたいな人が『落ち着いて』と男性をなだめると、われに返ったように持っていた包丁やバッグを路上に置いて、うなだれていました」
このとき、Aはほかにも叫び声をあげていたという。
「『おれは死ぬしかないんだ!』とも叫んで包丁を自分に突き付けていたようですが、後でAの体を確認したところ、ためらい傷なども確認されなかった。Aは警察の調べに対し、『目指している医者になるため東大に入りたかったが、成績が1年前から落ちてきて悩んでおり、自信をなくした』と語り、『医者になれないのなら人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた』と犯行動機を話しています」(前出・全国紙記者)
“医者になれないなら切腹”という飛躍した考え方に驚くとともに、そこまで思いつめ、そして罪を犯す場として志望校の東大を選ぶという、崇拝にも近い歪んだ執着心はどこで芽生えたのだろうか。
それを解き明かすカギとなるのが、中学の卒業文集だ。
《私は三年間の中学校生活で、行事や部活動、その他色々なことを経験しましたが、やはり「勉強」というものが一番長く経験したものでもあり、自分をときに苦めたものであり、助けてくれたものでもありました》(原文ママ)
将来の夢、修学旅行、部活動、頭に去来するさまざまなものを差し置いて、Aが中学校の卒業文集のタイトルに持ってきたのは「勉強」の2文字だった。