ショートプログラムの演技を終え、リンクの穴があった箇所を確認する羽生結弦(時事通信フォト)

北京五輪でショートプログラムの演技を終え、リンクの穴があった箇所を確認する羽生選手(写真/時事通信フォト)

 最初に、リンクから離れていた数日間の気持ちの変化について聞かれると、「もちろん色々なことは考えました」と話し始めると、許容量以上に痛み止めを飲んでいることを語る時は目を伏せ、その後「それでもやっぱりここで滑りたいなと思って滑らせていただきました」と話す時は前を向いた。

 演技がベストではなかったとしながらも、「それでもすごく何か残念だったなっていう雰囲気に包まれなかったっていうか」と話し、「ショートははっきり言ってすごく満足しています」、「結果としてジャンプとしての最高点には辿り着けたと思っています」、とまっすぐ前を見つめた。揺れることなく、まっすぐ向けられた視線から、今自分ができる最高の演技ができたという満足感の強さが感じられた。

“挑戦”というキーワードやそれを連想させる話、思いや考えを巡らせている時は、上に視線を向ける仕草が特徴的だった。4回転半への挑戦についての質問では「絶対に思いっきり跳んで、思いっきり高いアクセルで、思いっきり早く締めてということを追求しました」と話し、右上に視線を移した。王者としての挑戦については、「挑戦ですね…」と上を見上げ、「大変なんですよ、守るって」と苦笑いした。この先もさまざまな事へ挑戦するのだろうが、きっとこれまでとは変わっていくのかな、という印象が感じられた。

 会見中、視線が左右によく揺れたのは、モチベーションについての質問だ。モチベーションについて「これからどうなるのかは分からない」と話した通りなのだろう。「一緒に跳んだ」という“心の中にいる9才の自分”の話では、視線を上下させながら「最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9才の俺自身だったなと思って。最後にそいつと、そいつの手を取って、一緒に上ったなっていう感触があって」と語った。

 このオリンピックが最後かという質問には、「ちょっと分からないです」と苦笑いした後に、俯いて間を開けた。「やっぱりオリンピックって特別だなって」としみじみと噛みしめるように答えると、「すごく幸せな気持ちになっていたので」と目を伏せ、「また滑ってみたいなという気持ちはもちろんあります」と前を見た。気持ちはあるが、視線が上に上がらない。今の時点では、次のオリンピックについては分からないということなのだろう。

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