第1回の会で白秋が言う〈美のための美は、本物をも超えうる〉といった言葉や、美と政治の関係を彼らが全力で考えたこの頃、日本も一つの青春期を終え、この先、大逆事件などが起き暗雲が垂れ込めはじめる。
「もしかすると美のための美を素朴に追求できたギリギリの時代。だからこその青春の爆発や先駆性に、私は惹かれたのでした。私自身は耽美的なるものに抗い難い吸引力や儚さ、危うさのようなものを感じています。本書の美にまつわる記述は全て、私の本音です」
元々が自分たちの「好き」から始まった物語だけに、「謎解きやこの会のことを読者が面白く読んでくれるのが一番」と宮内氏は言う。それでは終わらない魅力や示唆に本書が多々富むことは、もちろん言うまでもない。
【プロフィール】
宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)/1979年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2012年の単行本デビュー作『盤上の夜』で日本SF大賞を受賞。2013年に(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、『ヨハネスブルグの天使たち』で日本SF大賞特別賞、2017年『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で三島由紀夫賞、2018年『あとは野となれ大和撫子』で星雲賞、2020年『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨新人賞。172.5cm、68kg、O型。著書多数。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2022年3月11日号