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【池上彰×横田増生対談】トランプ氏、ウクライナ侵攻の間隙を縫い存在感増す

トランプ氏の存在感が増す理由とは(写真/EPA=時事)

トランプ氏の存在感が増す理由とは(写真/EPA=時事)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界情勢を激変させるインパクトをもたらした。なかでもアメリカでは、これに伴いバイデンの失速とトランプの復活という奇妙な現象が起きている。テレビ解説でもおなじみの池上彰氏が、話題の新刊『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』の著者・横田増生氏と語り合った。【全3回の第1回】

共和党が「トランプ党」に

横田:ついにロシアがウクライナに侵攻しました。

池上:際立つのはバイデン大統領の弱腰です。彼は事前にロシア軍がウクライナに侵攻した際の対応を問われて、「軍事力を使うことは検討していない」と語りました。これでプーチン大統領は安心して軍を動かすことができた。外交の定番として「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と言うべきだったのに、素人のような発言でした。

横田:その間隙を縫って存在感を増しているのが前大統領のトランプです。ロシア軍の侵攻開始後、「俺が大統領ならこれは起きなかった」「我々の指導者は愚かだ」と早速バイデンを批判しました。

池上:自分が大統領の時はロシアに弱腰で「プーチンを尊敬している」とまで言っていたのに、手の平を返してバイデンを叩いていますね。

横田:確かに大統領時代のトランプは、ロシアに弱みを握られていると囁かれるほど及び腰でした。過去にモスクワのホテルで複数の売春婦に変態プレイをさせていたところを隠し撮りされたとの噂もありました。

池上:大統領選の頃からトランプはバイデンを「スリーピー・ジョー(寝ぼけたジョー)」と揶揄していました。バイデンが大統領に就任してアフガニスタンから撤退した時も「米国史上最大の外交政策の敗北」と糾弾した。でもそもそもアフガンから撤退を決めたのはトランプでした。

横田:そのあたりの事実関係がメチャクチャですよね。それなのに共和党内でトランプの人気が高まっています。昨年1月6日、トランプ支持者が連邦議事堂を襲撃して多数の死傷者を出す事件が勃発してトランプの政治生命は尽きたと思いましたが、ここに来て復活しました。

 トランプは連邦議事堂襲撃の弾劾裁判で弾劾に回った共和党の議員に復讐の攻撃を仕かけて、次々と追い落としています。もはや共和党にトランプに逆らえる議員はほとんどおらず、共和党が「トランプ党」になった。

池上:このタイミングで新たなSNSもスタートしました。トランプは連邦議事堂襲撃を煽ったとしてツイッターとフェイスブックのアカウントを凍結されたのですが、2月末に独自SNS「トゥルース・ソーシャル」のサービスを始めた。初日には待ち構えていたトランプ支持者が申し込みに殺到して、サーバーが止まる人気ぶりでした。

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