芸能

『カムカムエヴリバディ』何もしない錠一郎は“4人目のヒロイン”だ

ミュージシャンの夢破れた大月錠一郎を好演(時事通信フォト)

トランペッターの夢破れた大月錠一郎を好演(時事通信フォト)

 人気沸騰中のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。〈未来なんてわからなくたって、生きるのだ。〉〈バトンを渡して、わたしは生きる。〉などのキャッチコピーに示されるように、異例の3世代ヒロインが登場して話題を呼んだ朝ドラもいよいよ最終盤を迎えた。ドラマオタクのエッセイスト小林久乃氏は、本作に“4人目のヒロイン”を見出したという。小林氏が綴る。

 * * *
 3月に入り、NHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(以下、『カムカム』)が最終章へ突入した。上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんの3人のヒロインによる戦前からの3世代を描く物語は、放送開始前から話題を呼んでいた。3人一緒に木の上でポーズをとるメインビジュアルを今一度見直すと、女性が自由に羽ばたくイメージが見事に表現されている。今までの朝ドラも良かったけれど、視聴者の間でいつにない盛り上がりを見せているのも頷ける。

 その傍らで、もう一人のヒロインだと任命したい登場人物がいる。それがオダギリジョーさん演じる大月錠一郎である。現在のヒロイン・ひなた(川栄)の父であり、るい(深津)の夫。職業はおそらく無職。

朝ドラ史上類を見ない夫の姿

『あさが来た』(2015年)で登場した、ヒロインの夫・白岡新次郎(玉木宏)のように、たとえば「ボンボン」「遊び人」という夫の設定は過去の朝ドラでも散見された。それでも、今回の錠一郎のように、働いている様子が一切見受けられず、いわゆる“ヒモ”状態になっている例は、あまり思い出せない。

 朝ドラ史上レアな存在となった錠一郎のヒモっぷりは視聴者の間でも、じわじわと話題に上がっていった。「ジョーさんはなんで働かないの?」「いつまたトランペットを吹くのか」。

 ストーリーを振り返ると、錠一郎の少年時代は不遇であり、いつも孤独と隣り合わせという暗雲の立ち込めた半生を送ってきた。戦災孤児で家族を知らない。名前もたまたま拾われた喫茶店のオーナーにつけてもらったもの。時を経てトランペットと出会い、るいとも想いが通い、さあ明るい道へ……と思ったら、原因不明の病気となりミュージシャンの道は断たれてしまう。絶望の果てに海に入ろうとしたところで、るいに救われる。

 彼がやっと手にしたのは“大月家”という家族。日向(ひなた)の道を歩く幸せを、数十年かかって掴んだのである。もうこのあらすじを反芻するだけで涙が溢れそうになってくる。錠一郎はただのクズや無職なのではない。るいという最良のパートナーに出会い、自我を見出した、錠一郎ブランドなのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト