これまでに出演した映画は160本を超す
1954年に公開された宝田さんの主演映画「ゴジラ」は、世界中に熱狂的なファンがいる怪獣映画の金字塔。水爆実験を描いた名作で、ゴジラを「反戦・反核」のシンボルと見る向きもあった。
「私もゴジラは人類に警告を発する生物だと思っているんです。考えてみれば、ゴジラも東西冷戦の犠牲者ですよね。水爆実験のせいで、体に放射能を持つようになってしまった。
いま、戦争を知らない世代の政治家が、ニュークリアシェアリング(核兵器の共有)を議論すべきだと発言していることには怒りを覚えます。日本は唯一の被曝国として、非核三原則は堂々と守るべきだと思います。愛する家族や友人を一瞬にして黒焦げにしてしまう爆弾を人類が持っていいはずがないんです」
2015年、81歳から取り組んでいる音楽朗読劇「宝田明物語」は、宝田さんの戦争体験をもとにしたミュージカルだ。
「ソ連兵の台詞や両親の言葉も入れて、自分で台本を書き上げました。戦争の過ちを語り継ぐ責任は、今後、戦後生まれの世代に委ねられることになります。私はこれからも自分の戦争体験を若い人たちに伝えていきたい。それこそが私の“終活”であると考えています」
平和を願う宝田さんの眼差しは力強く、優しさに満ちあふれていた。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
「まだ働かなくてはいけない」と語っていた
共演者の岩本蓮加を絶賛していた
ロシアによるウクライナ侵攻に心を痛めていた
ソ連兵に撃たれた箇所を説明する宝田さん