自民党で落選議員への“役職バラマキ合戦”が起きている。麻生太郎・副総裁は麻生派元幹部の河村建夫・元官房長官と側近の松本純・元国家公安委員長を「副総裁特別補佐」に任命した。
松本氏といえば、コロナ自粛中の“銀座クラブ通い”を批判されて自民党離党に追い込まれ、昨年の総選挙で落選。今年になって自民党復党が認められたものの、「まだほとぼりは冷めていない」と地元の自民党神奈川県連や麻生派内からも異論が出て、麻生派分裂騒動にまで発展する火種となった。
一方の河村氏は山口3区で林芳正・外相との激しい公認争いに敗れて引退を余儀なくされ、かわりに地元の中国ブロックから比例代表で出馬予定だった長男・建一氏も地縁のない北関東ブロックに変更され、あえなく落選した。自民党ベテラン議員が言う。
「地元回りやイベントに出るときはただの元議員より『副総裁特別補佐』の肩書きがあった方が箔がつく。麻生さんは側近のマツジュン(松本氏)の再起を支援するためにわざわざ役職をつくって与えた。河村さんも息子の建一氏が夏の参院選比例代表での出馬を目指している。父親としては引退した元官房長官より、現役の副総裁特別補佐のほうが息子の応援がしやすい。麻生さんの温情だよ」
「特別補佐」とはどんな仕事なのか。
毎日の活動内容をホームページで報告している「松本純の国会奮戦記」を見ると、特別補佐に就任(今年2月1日)以来、大半は地元でのイベント出席や支援者への弔問などいわゆる“どぶ板”が中心。国政関連は毎週木曜日に開かれる麻生派の会合に出席するくらいだ。党務に勤しんでいる印象は薄く、次の選挙に向けて“箔”をつけるための役職のように見える。
落選議員への“役職バラマキ”は麻生氏だけではない。むしろ先んじたのは高市早苗・政調会長だ。
高市氏は昨年の総選挙直後の11月に中山泰秀・元外務副大臣を外交・国防・ゲームチェンジャー領域担当の「政調会長特別補佐」に起用、12月にはやはり落選中の上野宏史・元厚労政務官を経済産業政策担当の「政調会長特別補佐」に起用した。いずれも安倍派の元議員だ。