自民党本部も把握していない
岸田文雄・首相と茂木敏充・幹事長も負けてはいない。2月3日付で岸田首相は國場幸之助・元副幹事長(岸田派)を「総裁特別補佐」、茂木氏は宮崎政久・元法務政務官(茂木派)を「幹事長特別補佐」に起用。いずれも沖縄選出で昨年の総選挙では小選挙区で敗れ、比例復活によりかろうじてバッジを維持した議員だ。
夏の参院選に続き、沖縄では秋に知事選が控えている。茂木氏は、「沖縄はまさに選挙イヤーだ。選挙や政策で私の仕事をサポートしてもらう」と、派閥会合で宮崎氏起用の理由を説明しているが、選挙に弱い派内の子分に肩書きで“箔”をつけてやるという狙いは共通しているようだ。
もっとも、この「特別補佐」という肩書き、以前は自民党内で若手議員の出世の登竜門とみられていた。安倍総裁時代には加藤勝信氏、萩生田光一氏、下村博文氏、西村康稔氏など8人の「総裁特別補佐」が任命されたが、その後、官房副長官などに就任して官邸を支え、大臣として重用された顔触れが多い。いずれも現職議員だった。それがいまや、落選議員や選挙に弱い若手議員の“救済ポスト”に変質しているのだ。
いったい、自民党には現在何人の特別補佐がいるのか。自民党本部も把握していなかった。
「特別補佐という役職は、党則に定められたものではありません。役員が必要に応じて補佐すべき内容に応じて任命している。そのため党の公式HPの役員欄には記載されていない。党本部でどなたが特別補佐についているか全てを承知しているかと言われると、存じ上げていない。松本氏の副総裁特別補佐と、國場氏の総裁特別補佐、宮崎氏の幹事長特別補佐就任は把握していたが、河村氏や上野氏など他の方は知りませんでした」(自民党総務局担当者)
ちなみに報酬については、「党としては出していません」(幹事長室)という。選挙が近づくにつれ、落選議員たちへの「特別補佐」バラマキがもっと増えそうだ。