独裁者の同盟に世界が怒り心頭(SPUTNIK/時事通信フォト)
「彼は1993年制作の『リトル・ブッダ』でシッダールタ王子(仏陀)役を演じて以降、仏教への精神的、心情的な絆を持ち続けてきた。もともと清廉潔白な人で、マトリックスで得たギャラの大半をがん撲滅活動に寄付したり、映画に出たスタントマンや裏方の人たちに自腹を切ってボーナスを出したりしていて、ハリウッドで彼の悪口を言う者はいない。マトリックスが中国で大儲けしていることに複雑な気持ちがあったのだろう」
米中関係の悪化のなかで、中国政府が認めたほとんど唯一のハリウッド・スターが“造反”したことで、中国のハリウッド離れは加速しそうだ。ハリウッド・メディアの編集長は、「これまでハリウッドのお家芸だったアクションものを凌駕するような中国のオリジナル作品が次々と出ている。今回のキアヌの決断、それに対する中国の報復は、ハリウッドと中国の関係が大きく変わる節目になるかもしれない」と分析する。
ロシアによるウクライナ侵攻は、「もう一つの独裁国家」中国が長きにわたりチベット人やウイグル族を支配し、弾圧してきたことも改めて浮き彫りにしている。特に中国の場合は、その経済的影響力があったから国際社会は「黙認」してきたが、中国にオリジンを持つキアヌが立ち上がったことで、文化やエンタメの世界でも中国はロシア同様に世界から排除され始めたと言えるだろう。
現時点ではキアヌからもワーナー・ブラザーズからも何のコメントも出ていない。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)