「たとえ脇役でも出演したいという女優は山ほどいますし、それが名の知れた人気監督の作品であればなおさらです。ただ、そうした女優はフリーで活動していたり、所属事務所が小さければマネジャーが同行しないことも多いですから、監督側からすれば“手を出しやすい”相手なわけです。また、レイプのように明確な犯罪ではないケースも多いので、“被害”を受けた女優側も公に訴えることをしてきませんでした。それによって加害者は裁かれず、“業界の闇“は深まっていくばかりだったのです」
ところで園監督といえば無名女優たちを見出し、作品に出演させることで、多くの埋もれた才能を開花させてきたことでも知られる。
「吉高由里子(33)や満島ひかり(36)、二階堂ふみなど、園作品への出演をきっかけに大きく飛躍した俳優・女優は少なくなありません。特に吉高は2006年の映画デビュー作『紀子の食卓』に出演するまではまったく無名の新人でしたが、同作でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞するなど頭角を現し、今や誰もが知る国民的女優となりました。園監督の埋もれた才能を発掘する“眼力”は並大抵ではないのでしょう」(映画ライター)
園監督は今回の報道を受け、映像制作会社「シオンプロダクション」公式サイトに直筆の謝罪文(4月5日付)を掲載。騒動を謝罪し「映画監督としての自覚のなさ、周りの方々への配慮のなさを自覚し、今後のあり方を見直したいと思っております」としたが、報道内容には事実と異なる点が多いとして「代理人を通じて、しかるべき措置をとって参る所存です」と争う姿勢を見せている。
ここにきて数多の“疑惑”が噴出する日本映画界。しかし明るみに出た今回の件ばかりでなく、闇の根は深いという。早坂氏は、日本映画界の構造にも問題があると指摘する。
「プロデューサーや監督に権力が偏って存在しているということです。“枕営業”という言葉が妥当かはわかりませんが、そうしたことをして仕事をもらっていた女優がいなかったわけではない。ただ、問題は、一部の権力者たちがキャスティングという権限を性搾取に利用できると味をしめ、自分たちの思いのままにできると勘違いしたこと。それが榊の一件のように、一般の女優らに対しても性暴力が広がる原因となっています。腐ってますね。絶対に許してはいけないことです。内側から健全化していかないといけない。でないと、これからも同じことが繰り返されます」と憤る。
ネット上では一部で“仕事が欲しい女優と監督との間で合意があったとすれば問題ない”とする書き込みがあるが、早坂氏が指摘する通り、それは間違いだ。明らかに強い権限を持つ監督が、その立場を利用して女性にとっては不本意な性行為を要求してはならないという意識が、エンタメ界全体に必要だろう。
「まず相談窓口を、いろんなところに設置しなきゃいけない。業界でも作らなきゃいけないし、制作会社ごと、プロジェクトごとに作ってもいいかもしれない。あとは業界でこういった性加害に関するガイドラインをしっかりと作っていくべきです」(早坂氏)
膿を出し切ることはできるのだろうか。