後悔のない人生はどこにもない。しかし守るべき者のために全力を尽くし完璧でありたいからこそ後悔が生まれるのだから、むしろ後悔の積み重ねこそが人生、まさしく「人生は後悔であり航海」なのだ。先の見えない生活の中で、様々な事情でベストの対応ができずともベターを繰り返すことの大切さにこの本は気づかせてくれる。親の病や衰えに狼狽えたり、自分の感情の爆発に反省したり…上手くいったことよりも数々の失敗のエピソードが身にしみるし勉強にもなるのだ。結婚式はリハーサルが出来ても葬式はぶっつけ本番というのは言い得て妙。初めてばかりの介護の日々。ちょっとした気の緩んだ時に振り込め詐欺に狙われるなど、本当にハッとさせられる。まさに一筋縄ではいかない人生を体感できる油断ならないエッセイなのだ。
読みながら一緒になって考えた。目の前の認知症にどう対応すべきか。家で看取るには何が必要なのか。ハプニングの合間の何でもないひと時が本当に愛おしく思えた。握り返された手の温もりを確かに感じた。山口さんのお母様を看取った気になった。山口家・母娘の絶対的な信頼に基づいた強い絆は読者の心に深く刻まれて永遠に生き続けるに違いない。そしてこれは決して他人事ではない。同じ様な体験をしている、これからする多くの人々の大いなる力となるはずだ。山口さん、これは大満足の作品です。さぞかし天国のお母様も喜んでいらっしゃることでしょう。愛情がいっぱいの素敵な一冊を本当にありがとうございます!