ライフ

文庫化で話題!食堂のおばちゃん・山口恵以子氏の「一筋縄ではいかない」エッセイ集

山口恵以子著『いつでも母と』

山口恵以子著『いつでも母と』

「食堂のおばちゃん」作家・山口恵以子さんが母親の介護と看取りを明るい筆致で綴ったエッセイ集『いつでも母と』が新たなエッセイや対談、解説を加えて文庫化され、早くも話題になっている。そこで『女性セブン』2020年3月12日号に掲載された、ブックジャーナリスト・内田剛さんの書評を再掲載する。

【書評】『いつでも母と』/山口恵以子/小学館

【評者】内田剛
 フリーランス書店員 1969年生まれ。NPO法人本屋大賞実行委員会理事で設立メンバーの1人。出版業界でベストセラーの仕掛け人として知られる。「POP王」の異名を持ち、これまでに作成したPOPの枚数はなんと5000枚以上。

【本の内容】
 本誌・女性セブン連載「母を家で看取りました。」を改題。著者が最愛の母の認知症発症から介護、自宅での看取り、そして葬儀やお墓のことまで、母娘で過ごした最期の日々をあたたかな筆致で綴ったエッセイ集。

 * * *
 畳の上では死ねない、という超高齢化のこの時代。介護本は世に溢れているが、一体何を手掛かりにしてよいか、わからない。悩めるそんな方々への朗報がこの『いつでも母と』の登場だ。この一冊は大切な人を看取るための実用的なテキストであり、愛し続ける大切さを記した精神的なバイブルともいえる。「人生には“まさか”という坂がある」「ピザは頼めば来るが“いざ”は突然やって来る」…予期せぬ出来事に躓かないための杖となるのがこの作品だ。

 著者は『月下上海』で松本清張賞を受賞された際に「食堂のおばちゃん」として各種メディアに登場。そのユニークなキャラクターで一躍時の人になった。以降もテレビ番組のコメンテイターなどで活躍されている人気作家。「食堂のおばちゃん」や「婚活食堂」シリーズなどが版を重ねる代表作である。とりわけ『恋形見』が素晴らしい! 

個人的な見解で大変恐縮だがあの世でも読みたい“棺桶本”に指定したいほど大傑作である(これが直木賞の候補にもならないのは本当に不思議…)。そんな筆力確かな山口先生の本音全開のエッセイだからこれが面白くないわけがない。率直過ぎる感情描写で、避けられない生老病死を見つめる視線は本当に人間味に溢れていて、どこまでも真っ直ぐで清々しい。

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト