ビジネス

悪しき円安と値上げの春 日本の「買い負け」はどこまで続くのか

6年7カ月ぶりに1ドル=124円台を付けた円相場を示す電光ボード。2022年03月28日(時事通信フォト)

6年7カ月ぶりに1ドル=124円台を付けた円相場を示す電光ボード。2022年03月28日(時事通信フォト)

 2022年の春はau携帯の3G停波、18歳成人など様々なトピックスがあるが、誰にでも関わりがあるのは「値上げの春」だろうか。パンやパスタ、ハム、ソーセージに油、文具やトイレットペーパーなど様々な分野で大手メーカーが値上げを発表している。公正取引委員会は、下請けなどに対して価格転嫁が適正に行われているか緊急調査を始めると発表した。俳人で著作家の日野百草氏が、商社マンに「悪しき円安」で買い負けがつづく日本の弱さについて聞いた。

 * * *
「悪しき円安を本当になんとかしないと、日本の一般国民は値上げで大変なことになりますよ」

 円安を憂い続ける筆者旧知の商社マンA氏(40代)、中堅専門商社のバイヤーだけに、日々の円安と日本の買い負けがダイレクトに響いてくる。最初に円安の被害に遭う立場と言ってもいい。そんな彼が訴えたいのはまさにその「悪しき円安」のこと。

「一部のアナリストが『戦争でドルと円が高くなる』なんて言ってましたけど、見事に外してます。現場も知らずに数字の羅列ばかり。それに『有事の円買い』なん今や昔ですよ」

 確かに、筆者の知るアナリストやら○○総研やらの一部は、ロシアのウクライナ侵略により3月はドル高、円高になると予想していた。「1ドル116円台に上昇する可能性」なんてリリース資料も虚しい限り、結果でとやかく言うつもりはないが、現実は3月28日に東京外国為替市場で一時、1ドル125円台をつけた。以降も120円台で推移している。1ドル=125円前後は、2015年に日銀の黒田東彦総裁が「ここからさらに円安に振れることは、普通に考えるとなかなかありそうにない」と発言したことから市場関係者の間で「黒田ライン」と呼ばれてきた。それが常態化しつつあるのだ。

「そもそも円安は対ドルだけではないんです。当時と違うのはそこですね」

 125円といえば1992年の円相場と同じ、30年間賃金の上がらない日本は、ついに円相場も30年前に戻ってしまった。主因は日銀が長期金利上昇を嫌って10年物国債利回りを誘導する買い入れ「指し値オペ」を繰り返したことによるものだが、その是非はともかく円は1990年前後の水準まで(短期的にはそれ以降も別の要因で円安はあったが)戻ってしまった。また対米ドルだけでなく円は軒並み(ユーロは弱含みだが)安くつけている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン