人を傷つけるのは、あからさまな悪意のある言葉だけではないんですよね。「頑張ろう」「オンリーワンを目指そう」、そういった、最大公約数的に“ポジティブ”だと思われている言葉というのは、意外と人を傷つける。
あるときから「ピンチはチャンス」という言葉が市民権を得るようになったような気がします。僕もかつては自作の歌詞に取り入れていました。でも、最近になってその言葉が嫌になってしまって。「ピンチはピンチだろ」って思うんです。
本人が自分で言うのはいいんです。確かに、ピンチを乗り越えた後にチャンスがくることはあるかもしれない。だけど、第三者が「ピンチはチャンス」と言うのは、一旦立ち止まって考えたほうがいいんじゃないかな。本当にピンチの状況にある人にそれを伝えると、傷つけてしまう可能性もあるわけですから。
妻の妊活休養発表のときと同じように、和さんが娘さんを生んだことに対して“無責任”“生んで終わりのつもりか”というような心ない言葉が、インスタグラムのコメント欄やDM(ダイレクトメッセージ)で送られたそうです。悪意を込めるのは論外として、僕は、SNSを活用する各々が、自分が何気なく使った言葉、それによって誰かを傷つけている可能性、そういうことをもう一度ちゃんと考えるべきだと思います。
◆鈴木おさむ(すずき・おさむ)1972年、千葉県生まれ。放送作家。映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍する。最新刊は、男性の不妊治療を、男性目線で描いた小説『僕の種がない』(幻冬舎刊)。