DeNA時代の筒香嘉智は2番起用でチーム成績も上向きに(2019年。時事通信フォト)
後続のソト、ロペスに繋げた「2番・筒香」
“不動の4番”を2番に持ってきた例では、2019年のDeNA・筒香嘉智が挙げられる。この用兵について、当時のラミレス監督は「彼は得点圏打率が良くないが、出塁率は高い。今まで4番の重責もあったと思う。2番に置けば、得点圏で打席に入るよりリラックスできる」とデータを持ち出し上で、チームにも筒香本人にもプラスになると説明していた。
「この時、ラミレス監督の采配を“奇策”と非難する解説者やファンもいました。初めて何かをする時、周りの批判は避けられません。そのため、指揮官はじっくり検証した上で采配を振るう。しかし、その作戦が定着するようになれば、続く監督たちは大した考えがなくても、批判はされない。一度、常識になってしまうと疑われにくいので、“なんとなく”やっても文句は出ない。もし昨日までの4番打者を2番に置く作戦が佐藤輝で初めて行われ、井上ヘッドがあのようなコメントをしていたら、相当叩かれていたと思いますよ」
今季の佐藤輝は4番では16試合で2割7分7厘、3本塁打、8打点、出塁率3割4厘で、チームの平均得点は2.44だった(記録は4月21日時点・以下同)。2番では6試合で3割5分、2本塁打、3打点、出塁率4割5分8厘で、チームの平均得点は2だった。佐藤輝の調子は上向いたが、打線全体の繋がりが良くなったとは言い難い。
一方、2019年のDeNA筒香は7月15日に初めて2番に入り、28日まで同打順を務めた。この間に13試合で3割8分3厘、1本塁打、7打点と打っただけでなく、四球を11も稼いで後続のソト、ロペスに繋げた。『2番・筒香』の打順で、9勝3敗1分とチーム状態も上がった。根拠を持って動いたラミレス監督の采配が的中したのだ。
一度は定位置の4番に戻った筒香だが、8月8日から9月1日まで再び2番を打った。この間は7本塁打、22打点と長打は出たが、2割3分5厘と低迷。比例するように、チームも22試合で11勝11敗の五分だった。
「どんな作戦をしても構わないですし、それこそ監督の特権事項です。ただ、思いつきや『他球団もやっているから』という安易な理由で右に倣えをしても、チームが勝てるようになるとは思えません。ファン全員を納得させるのは無理ですが、どんな采配も根拠を持ってすれば、一定のファンは監督に理解を示すと思いますよ」
結果が出ていないからこそ、采配の根拠が問われるということか。