ルームシェアの部屋には二段ベッドがあるだけだった(イメージ)

ルームシェアの部屋には二段ベッドがあるだけだった(イメージ)

「15万円を払うのは『自己投資』といって、自分のためということでしたが、いや、正直意味わかんないなって(笑)。東京に出てきてから数年は、街角や居酒屋で勧誘する、これを『現場に行く』っていうんですけど、それもやってました。でも、結局マルチだし、引っかかる人はそう多くない」(下田さん)

 実は下田さん、関東の有名私大を卒業後、大手人材会社に就職し関西支店に配属された、という経歴を持つ。そこでマルチ商法と出会ってしまい、その後、マルチ勧誘活動に支障が出るということで、師匠に言われるがまま転職。というのも、仕事終わりの日々の勧誘活動、そして組織内で「つるみ」と呼ばれる、師匠やリーダーたちからの「教え」を乞う時間を最優先させるためには、時間に融通の効く、契約社員や派遣社員に転職するのが正しい仕事のやり方で、成功への近道とされていたからだ。

 しかし、下田さんは組織に何年も所属していながら、実際に勧誘に成功した実績はゼロに近い。勧誘はしたが、毎月、15万円の自己投資と呼ばれている物品購入をするようにいうと「逆上された」と笑う。

「マルチじゃん!って言われてしまい、仕方ないからその人の分の15万円も、数ヶ月ほど払いましたね。実績あげたかったですし。でも勧誘はそれっきり。勧誘できないと、一般的には厳しく叱責されるんではないかとか、辞めさせられるんじゃないのかとか思われるんですけど、あまり厳しく強要はされませんでした。もちろん、勧誘できていないと気まずい思いはしましたが、それも慣れちゃえばどうってことなかった」(下田さん)

 結局、ルームシェア生活は3年ほど続いたというが、その間、下田さんが何をしていたかといえば、師匠と言われる人物が経営する飲食店や雑貨店の手伝いや、セミナーと呼ばれる組織の集会スタッフ、それに単発のアルバイト。無論、その間も「自己投資」を続け、さらには部屋代……といっても8畳ほどの部屋に二段ベッドがあって、そこに数名が暮らす劣悪な環境だったが、数万円の家賃も支払っていた。手伝いやスタッフは無償で請け負っていたため、月に10万円弱ほどの赤字がかさんでいった。

「関西時代から含めると、8年ほどですかね、集団の活動に関わっていたし、仕事も組織の活動を優先させるためにまともにやっていません。35歳を超えたあたりから、俺には何も残っていないじゃん、と現実と向き合わざるを得なくなったんです。借金も、すでに300万円ほどありました。同じような境遇の仲間は何人かいましたが、もう組織の活動を頑張ってやっている人はいなかった。それでもみんな、生きていける場所がここしかなくなっていたから、もう逃げ出せなかった」(下田さん)

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