国際情報

池上彰氏 ウクライナが2つに分断され「第2の朝鮮半島」になる可能性を指摘

池上彰氏はウクライナの先行きをどう見るか

池上彰氏はウクライナの先行きをどう見るか

 ロシアによるウクライナ侵攻は、日々、双方が戦況について異なる発表をするため、実態が掴みにくい。私たちはどのように情報に接すればいいのだろうか。池上彰氏と、ウクライナで現地取材を続けるジャーナリスト・水谷竹秀氏がリモートで緊急対談した。【前後編の後編。前編から読む

池上:21世紀になってヨーロッパの主権国家に他国の軍隊が攻め込むなんてあり得ないと誰もが思っていました。戦車戦で戦車が大量に破壊されるなんて、20世紀前半の戦争ですよ。ただし情報戦争という点では、ウクライナ戦争は明らかに21世紀の戦争です。

水谷:それはものすごく感じています。戦争勃発後、ウクライナの被害者の遺体写真が情報源も不明なまま、即座にSNSで拡散されました。ウクライナ軍の死者についてもゼレンスキーは3000人とするが、ロシアは2万人と言う。双方の主張に隔たりがありすぎて、どの情報を信用していいのかわかりません。情報戦が過激化するなかで僕ができることは、ひとつひとつの証言の裏取りを重ねていくことだけです。

池上:ただし地道に証拠を積み上げるようなルポよりも刺激的で衝撃的な内容が好まれるのが、戦争報道の一番のジレンマです。そんななか、水谷さんは現地で工夫して、地域防衛隊に志願した女子大生兵士というキャッチーな話題も取材していますね。こういうルポなら日本の読者も興味を持つはずです(『FRIDAY』4月22日号)。

水谷:男性が志願するのは何となくわかるんです。でも女子大生が地域防衛隊に志願したり、一般女性が訓練所でカラシニコフの使用法を学んだりするのは、どういう気持ちなのか興味がありました。

池上:ルポを読むと、女性でも本当に故郷を守りたいんだという切迫感が伝わってきます。

水谷:ただし、本音は異なる部分もあるんです。長く一緒にいて打ち解けたコーディネーターに「いざという時は武器を持って戦うか」と尋ねると、しばらく悩んでから「戦うしかない」と言葉を絞り出しました。その一方で彼は、「正直に言うと、人を殺すことは望んではいない」とも打ち明けてくれました。

池上:重い言葉です。

水谷:今回の戦争が始まってから、18~60歳のウクライナ人男性の出国を禁じる大統領令が出ましたが、実際には国境付近で賄賂を払って国外に出る男性もいるようで、「○○は裏切り者だ」と非難されます。でもコーディネーターは、「恐怖心から保身に回って、逃げる奴の気持ちもわかる」とも言いました。これが戦場における葛藤であり、単に白か黒かでは分けられないはずです。

関連記事

トピックス

北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン