津波は大阪湾から上陸「大阪」浸水MAP

津波は大阪湾から上陸「大阪」浸水MAP

津波が川を上ってくる

「3.11では陸上に漁船が打ち上げられました。同じ光景が、間違いなく大阪でも起こります」

 そう語るのは、関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授の河田惠昭氏だ。2012年に内閣府・中央防災会議のもとで、南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの主査を務め、翌2013年に公表された大阪府の津波被害想定を作った人物である。

「南海トラフ巨大地震が発生した際、津波に襲われる大阪は中心部から早く浸水します。大阪は海抜ゼロm地帯が広く、浸水が深くなることから、多大な犠牲者が出るでしょう」(河田氏)

 南海トラフでM9クラスの最大規模の地震が発生すれば、大阪府の死者は13万人を超えると想定されている。府内のほぼ全域で震度6弱が観測されるなか、沖合では津波が発生し、時速720kmで紀伊水道を北上する。津波は地震発生から約2時間で大阪湾に到達し、さらには淀川や、河口が隣接する安治川、尻無川、木津川を遡上して大阪市の中心部に流れ込む──。別掲の図は大阪府の津波浸水想定をもとに作成した被害予測マップだ。

「津波はまず臨海部を飲み込み、大阪万博会場となる人工島・夢洲やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)などがある此花区、海遊館がある港区、京セラドーム大阪のある西区などが浸水する恐れがあります。それから氾濫水がキタ(梅田駅周辺)やミナミ(難波・心斎橋周辺)に向かうまで、わずか20分程度と予想されます。道頓堀川からは水が溢れ出し、梅田駅や大阪駅、中之島の国際会議場あたりまで浸水想定区域に含まれています」(河田氏)

 津波はベイエリアから上陸すると思いがちだが、大阪の特徴は、海から河川を伝って遡上してくる「河川津波」が襲ってくることだ。大阪が商業の街として栄えるために重要な役割を果たした河川が、巨大津波を前にしては仇となり、中心部まで急激に浸水する要因となりかねない。津波の侵入と時を同じくして、市内には地震による液状化が生じ、あちこちで水が噴き出し、主要な道路が陥没する。

 さらなる危険が迫るのが地下街と地下鉄だ。梅田の地下街は傾斜のある通路が斜めに交差する複雑さから「迷宮」と称される。他にも大阪の中心部は数多くの地下街を擁し、地下鉄は市民の足となっているが、津波は地下空間にも一気に流れ込む危険がある。

「南海トラフ巨大地震で梅田の津波は最大2mに達すると予測されています。梅田周辺だけで200以上あるとされる地下街の入り口から津波が流れ込み、1時間以内に水没する危険があります」(河田氏)

 こうした水害への対策について、大阪メトロを運営する大阪市高速電気軌道株式会社に尋ねると、「止水扉の追加設置や操作時間の短縮化、止水パネルの軽量化、換気口の嵩上げ等の浸水対策に取り組み、(中略)大津波警報・津波警報から1時間以内に全てのお客様に地上3階相当以上に避難していただく」(広報戦略課)などの回答があった。

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