誰もが完璧ではない中、視点次第で見え方が変わる「様々な角度の理解」は、小説だから体感できるのだと。
「それがあればもっと人にも優しくできるかもしれないし、誰かが過去に示してくれた自分では思いもつかない解決法に気づけるかもしれない。あ、そうか、あの人がこう言ってたって。そうやって大事なことを、バトンみたいに渡していけたらなって思うんです」
人はいつか死に、関係も変わるが、私たちは誰かに託された知恵や力を頼りに、また別の誰かを救うこともできる。その順不同でお互い様な循環が機能する限り、現代の生きづらさも少しは解消されるのかもしれない。
【プロフィール】
町田そのこ(まちだ・そのこ)/1980年福岡県生まれ。現在も同県在住。「福岡を出たことがなくて、今も京都郡に家族と住んでいます」。理容師、専業主婦等を経て、2016年「カメルーンの青い魚」で第15回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞し、翌年『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞。また『星を掬う』も2022年度の同賞にノミネート。著書は他に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』「コンビニ兄弟」シリーズ等。154cm、B型。
構成/橋本紀子 撮影/内海裕之
※週刊ポスト2022年6月10・17日号