黒柳の親善大使就任30周年のイベントに駆けつけた田沼さん(時事通信フォト)

黒柳の親善大使就任30周年のイベントに駆けつけた田沼さん(時事通信フォト)

 ユニセフでの活動目的は、開発途上国の子供のために働くこと。重度の栄養失調に苦しむ子供や、内戦で負傷した子供、大人に銃を渡されて10才くらいから人を殺してきた少年兵にも会った。

「南スーダンの首都に『トットちゃんセンター』と名付けられた建物があるんです。本来、ユニセフはこういう建物を造ることを好まないんだけど、現地の少年がこのセンターにかくまわれたためにゲリラに殺されずにすんだということがあったんです。大人になって再会したときに『命の恩人です』と感謝されたことに黒柳さんは喜んでね。それまでずっと腰が痛いと言ってたのに、途端に元気になってひとりでスタスタ歩いてましたから(笑い)」

 どんなに過酷な状況に直面しても、子供たちの前で泣いたことはないという黒柳。だが、帰国して田沼さんが撮った写真を見ながら、大粒の涙を流すこともあったという。

 緊急事態下の国に行くことが多いため、危険な目に遭うことは日常茶飯事だった。

「いちばん衝撃的だったのは1996年に、ボスニア・ヘルツェゴビナに向かう道中でスパイ容疑で、クロアチアの警察に拘束されたときのことです。もちろん濡れ衣なのですが、移動車のバスごと警察に連行された我々は、運転手が取り調べを受けている間、何時間もバスに閉じ込められたんです。

 食べるものはないし、喉もカラカラ。黒柳さんは、そんな不安な状況でも、バスの中で芝居の物真似をしたり、歌を歌ったりしてみんなを励ましてくれました。どうやって抜け出したのかは謎ですが、いつの間にか街に出て、彼女がかごいっぱいに買ってきてくれたトマトのおいしかったこと。バスは没収されて、深夜に解放されたのですが、気の毒なことに、運転手が帰ってくることはありませんでした」

※女性セブン2022年6月23日号

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