第26回参議院選挙で、有権者に支持を訴える女性候補。今回の参院選に立候補した女性は選挙区122人、比例代表59人の計181人となり、過去最多を更新した(イメージ、時事通信フォト)
こういった被害は、なにも若い女性候補者だけが受けているものではない。中部地方の元女性町議・B美さん(50代)は、選挙時に有権者回りをしていたところ、所属政党の応援団長だという地元の有力者に、心無い言葉をぶつけられた。
「飲み会の席で『当選の極意を教えてやる』と言われたのですが、それが酷い内容でした。ババアなんだから愛想良くニコニコしていれば良い、男には色目をつかいなさい、といったものでした。会場には女性もたくさんいましたが、その言葉を聞いたみんなが手を叩いて大笑い。のちに男性に直接クレームを入れたところ、事務所スタッフが飛んできて『失礼なことを言うな』と釘を刺されました。もう離党していますが、その政党は今も女性の活躍を、などと謳っている」(B美元町議)
このように、票ハラとはいっても、立候補者へ票を直接、投じる可能性がある有権者が加害者とは限らないのだと、先出のA子市議は断言する。
「所属政党やクラブが公認のハラスメントが行われている実態まで踏み込んでもらわないと、あまり意味がないと思うんです。女性議員や女性候補は、所属政党などのバックアップがあることを理由に声を上げられない。上げたら当選はまずあり得ない」(A子市議)
つい先日には、演説中のある女性立候補者が、応援に駆け付けた同じ政党の男性候補者から体を何度も触れられている動画が、二人の所属政党のオフシャルYouTubeチャンネルから配信された。男性はセクハラを否定し、女性立候補者もまた被害を否定したが、動画を見た人からは、知名度もキャリアも上回る男性候補者が相手では、所属政党に遠慮して女性は何も言えないのではという指摘をされている。
国会議員の私設秘書を務めた経験のある都内の私大講師も、A氏の証言を補完するような体験談を吐露する。
「特に国政選挙の女性立候補者などは、選挙コンサルがバックアップすることも珍しくありませんが、髪型から衣装の選定、化粧の方法まで細かく指摘してくる人がいます。当選のためのイメージアップは確かに必要だとしても、その指摘が明らかにセクハラな場合も少なくない」(私大講師)
例えば「男性ウケはよいが女性ウケを狙うために髪の色を変えろ」とか「露出を多くすれば写真映えして目立つからノースリーブを着用しろ」といったような、まさにセクハラに他ならない「指導」が存在するという。また、握手の際には有権者の手を握り締め、中腰になって男性有権者を見上げるように行えといったような、明らかに相手に媚びる対応を行うよう言われることもあったと話す。同じことを男性候補者が指南されているとは、とても思えない。
有権者がセクハラをしても問題ない、と感じる背景には、候補者をバックアップしている政党や関係者による意向が強く影響しているのかもしれない。