猪瀬氏と海老沢氏を囲んだボランティアの集合写真(維新の会・金澤ゆい氏のツイッターに掲載)
維新の党勢が拡大するにつれ、こうした批判を封じる強権的な態度には疑問符が付くことになるだろう。
18日間の選挙戦で最も印象深かったのは、海老沢の演説にほとんどだれも足をとめることがなかったことだ。応援弁士なしで海老沢が演説したとき、一番多くの人が足をとめたのは、選挙投票日前日の豊洲駅前のことで10人前後だった。どうして豊洲駅前かといえば、海老沢や音喜多の居住地で、家族や顔見知りが応援に来たからだ。
共同代表の馬場伸幸が応援にやって来ても、ほとんど集客につながらない。歩いている人からは、「いったいあの人、だれなの?」という冷ややかな空気が流れてきた。松井一郎や吉村洋文になって、ようやく街ゆく人は足をとめる。しかしそれにしても、50人から最大で100人だ。
吉村や松井といえども、東京での知名度や集客力はまだまだ足りない。
私は、東京都でトップ当選を果たした朝日健太郎の応援演説に、前総理の菅義偉が有楽町駅前に来たのを見に行った。私が初めて海老沢のボランティアとして参加した同じ場所である。書店の入った2階から撮った写真には、炎天下にもかかわらず300人を超す聴衆が写っている。
自民党だけじゃない。共産党の山添拓も、れいわの山本太郎も見に行った。どの候補者と比べても、海老沢の集客力のなさが際立った。
日本維新の会が、どれだけ大阪で怪気炎を上げようとも、全国政党となるには、まだまだ道のりは遠い。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/ジャーナリスト。1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。2020年、『潜入ルポ amazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞(8月に『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』と改題し刊行予定)。近著に『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』。
※週刊ポスト2022年7月29日号