海老沢由紀氏(中央)の選挙戦に協力
だれも足をとめない
選挙戦の最終盤になって、大きな事件が起きた。安倍晋三元総理の暗殺事件である。
私はこの日、午前中に取材を終え、午後一番の街宣活動から参加する予定だった。
グループのLINEには、12時半に、安倍銃撃事件を受け、いったん街宣活動を中断して、午後2時半から再開する旨が流れてきた。しかし、その後、「党本部から通達があり、本日8日の選挙活動はネット発信も含めすべて中止・終了いたします」というメッセージが流れてきた。少しでも長く選挙活動をしたかった海老沢陣営には、痛恨の空白となった。
維新の選挙活動で目立つのは、聴衆からのヤジや抗議活動と、それに過剰に反応する維新陣営の体質だ。
党代表の松井一郎が三軒茶屋に来て、「何でも反対の野党ではダメ。自民党をピリッとさせる野党が必要だ」や「身を切る改革」について話していると、「大阪に帰れ!」というヤジが飛んだ。その直後の目黒駅でも私の目の前を、白のワイシャツ姿の50代のサラリーマンが、「帰れ、帰れ、大阪に」とつぶやきながら、通り過ぎるのを見た。
その後、吉村洋文が7月2日の新宿駅前で演説を始めたとき、抗議を始めた男性に向かって参院議員の柳ヶ瀬裕文が詰め寄って排除している動画がネット上に残っている。
私が立ちあったのは、7月7日夕刻、吉村が田町駅で演説を始めたとき、駅のデッキ部分から「大阪、帰れ!」「大阪、帰れ!」のコールが起こった。
私はすぐにデッキ部分に駆け上がろうとするが、テンガロンハットをかぶった男性が、維新のスタッフ2人と音喜多駿に追いかけられるようにして駆け下りて行った。
私とすれ違いざまに追いかけていた維新の3人のうちだれかが、「こっちは、お前の名前、分かってんだぞ! ネットに晒すぞ!」とすごんだ。
その男たちの後をネット配信担当の女性スタッフが、動画として証拠を押さえるためなのか、スマホを持って追いかけて行った。時間にしてほんの1、2秒のこと。
後日、この男性を見つけて話を聞いた。ヤジを飛ばしたのは、東京在住の男性会社員だった。
「初めは、海老沢に向かい、『ボーナス泥棒!』と4回叫びました。彼女が、大阪市議としてボーナスがもらえるぎりぎりまで議員をやり、その直後、東京選挙区で立候補したのが納得できなかったからです。その後、吉村に向かって、『大阪、帰れ!』と4回ぐらい叫んだところで、維新のスタッフ4人に押さえつけられ、居た場所から無理やり引きはがされました。そのうち1人が、『痛い痛い! ケガをした。警察を呼べ』と言いがかりをつけて私を抑え込もうとしたので、逃げたんです。
吉村に叫んだ理由ですか? 維新が進める新自由主義的な政治が、日本を破壊するんじゃないかという危機感からです」