佐賀大病院には、エンジェルドレスの在庫が数点ストックされる。一着使用したら東さんたちが、新たな一着を手作りし、補充する。エンジェルドレスの注文は、1件の死産が起きた事実を意味する。縫い子の宮崎裕子さん(47才)は、正直な気持ちを吐露する。
「私もお母さんやご家族について想像をしようとはするんですけれど……。私にも子供がいます。だから、うまく想像ができなくて……」
宮崎さんは「いえ、ごめんなさい」と声を詰まらせた。
「想像したくなくて……。もしも想像したら、つらくて、作れなくなってしまうから。申し訳ないと感じながらも、お仕事だと割り切って作ったこともありました」
それは、わが子を亡くした母親の心情に思いを重ねようとして、宮崎さんの心に生まれた感情に違いなかった。
宮崎さんも東さんも、わが子にエンジェルドレスを着用させざるをえなかった母親や家族の存在に思いを馳せながら、一針一針、心を込めてエンジェルドレスを縫う。
(第4回へ続く。第1回から読む)
取材・文/山川 徹(ノンフィクションライター)
撮影/宮井正樹
※女性セブン2022年7月28日号