人生100年時代を幸せと捉えるか、不幸と捉えるかは、心と体のあり方次第。そんな中、100歳を過ぎてなお、ひとりで元気に、現役バリバリで活躍中の女性がいる。ピアノ歴95年の現役ピアニスト・室井摩耶子さん(101歳)だ。新刊『マヤコ一〇一歳 元気な心とからだを保つコツ』を上梓したばかりの室井さんに、年を重ねても楽しく幸せに生きるための秘訣を聞いた。
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この年でも現役のピアニストであることが珍しいらしく、「なぜ100歳を過ぎても元気なのか」と、よく尋ねられるようになりました。長く生きてきたから偉い、なんてことはありません。勝手に年を重ねただけのことです。年齢のことを気にしたこともありませんでしたし、気がついたら100歳を過ぎていました。
もちろん、100歳を感じることは日々の中で多々あります。よいしょと椅子から立つでしょ? 立つのだってひと仕事です。やっとのことでは立ち上がるのだけど、何のために立ち上がったか思い出せないことがあります。
「マヤコ、しっかり!」と声に出してみるけれど、思い出せないのは仕方がありません。こんなときは100歳って便利ね。「100歳なんだからしょうがないわよ」と言葉にしています。「老い」って、くよくよしないための「言い訳」を作ってくれているのかもしれません。
強いて言うなら、「人の目」を気にしないのがいいのかしら。こうしなさい、ああしなさい、と周囲はいろいろ言うけれど、どうしようもできないことはあります。嫌なことは嫌ですし、嘘つきの人とは誰であっても付き合いたくありません。
ピアノを選んだのも私。結婚せずにひとりでいるのも私。眠くなったら「からだがノーって言ってるわ」とさっさと寝る。相手にも頼りたくないし、求めない。食べたいものを食べ、やりたいことをやる。心と体の自然に任せた生活で、人の言うことは聞きません。
嫌なことも素敵なことも、心の「頭陀袋」に放り込んでおしまい。そんなふうに自分らしく、個性豊かに生きたほうがいいなんて考えていたら、あるとき、こんな考えが浮かんできたのです。
「老いては『子』に従え」と言いますが、「老いては『個』に従え」ではないかと。
年老いた後は、何事も子どもに任せるのがいいという格言めいた言葉がありますが、私は最期まで、「個」の意志を貫いて生きることが大切だと思うのです。私という「個」、私の「心と体」に自然体で従ってきたからこそ、年齢を重ねても、いつまでも幸せに生きられているのだと思います。