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【コロナ禍の海外移住者寄稿#5】2か月電気が止まってわかった日本人が理解し難い「豊かな人生」とは

イズミルには多くの遺跡がある。

イズミルには多くの遺跡がある。

2021年、コロナ禍にもかかわらず、海外移住を果たしたアラフォー女性・ NATACOさんが地中海に面したトルコの都市イズミルから送るエッセイ第5回。今回が最終回になります。現代人が生活するにあたって最低限必要な「ライフライン」。電気、水道、ガスのどれか一つでも使えなくなったら生活がままなりませんが、NATACOさんはトルコで電気のない生活を送り、あることに気づいたそうです。豊かな人生とは何か。その答えは意外なものでした。【連載全5回中最終回】。

 * * *

 イズミルの街を歩いていると、至るところに遺跡があります。ビルを建てるために地下を掘ったら、新たな遺跡が発見された、なんてこともよくあるそうです。

 トルコ最大の遺跡といわれるエフェソス遺跡もイズミルにあります。あのスポーツブランド『ナイキ』のロゴの由来となった勝利の女神ニケのレリーフがあり、世界的にも有名な観光スポットです。イズミルには世界遺産に登録されている遺跡もあり、都市開発されている部分や雄大な自然を感じられるエリアなどが共存していて、街全体が“デザイン”されているように感じました。

 なぜ、そのように感じたのか、いろいろと考えたところ、日本とのある違いに気づきました。日本の観光地にありがちな「進入禁止」の看板や「触ってはいけません」といった注意書きがあまり見られないのです。だから、遺跡などが街と調和しているように見えたのです。

 これは観光地としてのデザインというより、トルコの方々の気質のように感じています。というのも、マンションやビルの解体工事現場、道路工事現場にも「進入禁止」の囲いなどがないことが多いのです。かなり近づいたところに細い規制ロープが張られていることもありますが、「そこまで近づけたらかなり危ないよ」と感じるほどの距離です。

 日本とりわけ東京で暮らしていると、道路や施設内、果てはトイレにいたるまで、注意書きで溢れています。駅や公共の施設では、アナウンスでも注意を促してくれます。しかし、トルコは日本と比べると明らかにその手の「注意」が少ないようです。海外で暮らすようになって初めて気づきましたが、日本は「安全が最優先」に考えられているのだと思います。これは、相手のことを考えられる「配慮の文化」とも言えるのかもしれません。

 この「配慮の文化」の違いについては、トラブル対策という点で、強く感じました。日本では、電気、水道、ガスといったライフラインでトラブルが起きた場合、かなり迅速に対応してもらえる印象です。今年に入って、イズミル内で引っ越しをしたのですが、新居のマンションの電気がつかないのです。新築でしたが、先に住み始めていた人もいたので、電気のトラブルなんてすぐに解決するだろうと思っていたら、なんと、そこから「2か月間」も電気が通らなかったのです。

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