エフェソス遺跡ではコンサートやオペラが開催される。

エフェソス遺跡ではコンサートやオペラが開催される。

◆電気がないなりの生活を送ろう

 電気がつながっていない理由は、外からマンションに電気を通すために必要な部品が欠品しているとのことでしたが、その説明を受けてから、まさか「2か月間」も電気なしの生活を送ることになるとは……。

 日本だと、まずこんな事態にはならないでしょう。訴訟モノかもしれません。特にライフラインのトラブルは、日本だと24時間いつでも電話一本で対応してくれる、そんなイメージを持っていました。しかし、トルコでは違います。例えば、何らかのトラブルが起こって、電話オペレーターが「すぐに担当者を向かわせます」と言ったとしても、すぐに来ることはまずありません。トルコの友人曰く「1日? 2日? そんなに早く対応しないでしょう。1週間以内に対応してもらえたら良いほうじゃないかな」というレベルなんです。

 それにいちいちストレスや怒りを感じてしまったらトルコでは生活できません。トルコの人々は電気がなくても、それを楽しんで、この機会に夜はロウソクで過ごしたりと、“クリエイティブ”にどんな環境でも楽しみを見出そうとする性質があるように感じました。それが1日ならば、私も楽しんでロウソクに火を灯すでしょうが、2か月ともなるとストレスはマックスです。

 先ほど、私が入居した新築マンションには既に入居者がいたと書きましたが、その人は2か月ではなく、3か月近く「電気なし生活」だったようです。ですが、トルコ生まれのその方は、特に激怒することもなく、家では電気を使わない生活を送っていました。そのメンタルの強靭さ、そして「電気がないなら、ないなりの生活ができる」というフレキシブルな生き方に感銘を受けました。

 電気なし生活が1か月半ぐらい過ぎた頃、私もロウソクに火を灯すのが日常になっていたし、「ないなりの生活」に順応し始めていました。そして2か月後、晴れて電気が通った時には、「電気がある生活は、なんて便利なんだ!」と思うまでにやや時間がかかりました。ちょっと慣れ始めていたんです、「電気なし生活」に。

 明かりがない、音楽が聴けない、アマゾンプライム・ビデオが見られない、iPhoneが使えない……それでも私は日中、買い物に出かけ、ランチは自炊し、友人と海沿いのレストランでディナーを楽しんだし、それなりに普通の生活を送れていました。もちろん電気があれば便利なんでしょうが、ないなら、ないなりの生活ができるんです。人間って。

 海を眺めながら食事をとっていると、家の電気のことなんて忘れてしまいます。だって、目の前の海がきれいで食事は美味しいんですもの。なんで、そんなときに電気のこと考えます? トルコの人って、たぶんそんな精神構造なんだと思います。

関連記事

トピックス

“令和の小泉劇場”が始まった
小泉進次郎農相、父・純一郎氏の郵政民営化を彷彿とさせる手腕 農水族や農協という抵抗勢力と対立しながら国民にアピール、石破内閣のコメ無策を批判していた野党を蚊帳の外に
週刊ポスト
緻密な計画で爆弾を郵送、
《結婚から5日後の惨劇》元校長が“結婚祝い”に爆弾を郵送し新郎が死亡 仰天の動機は「校長の座を奪われたことへの恨み」 インドで起きた凶悪事件で判決
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
「最後のインタビュー」に応じた西内まりや(時事通信)
【独占インタビュー】西内まりや(31)が語った“電撃引退の理由”と“事務所退所の真相”「この仕事をしてきてよかったと、最後に思えました」
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬・宮城野親方
【元横綱・白鵬が退職後に目指す世界戦略】「ドラフト会議がない新弟子スカウト」で築いたパイプを活かす構想か 大の里、伯桜鵬、尊富士も出場経験ある「白鵬杯」の行方は
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン