その後、鈴木氏が演出を手掛ける『自転車キンクリーツカンパニー』の所属俳優となった佐藤は、サラリーマンを辞めて本格的に俳優の道に踏み出した。
「うちがプロデュースした芝居に出たときに、『生まれて初めて演技をしてギャラを貰った』と言っていました。たいした額じゃなかったんですけど。当時から彼は『売れたい』とはっきり言う気持ちのいい人でしたね。売れたいのは、お金がたくさん欲しいとか、いい車に乗りたいとかじゃなくて、たくさん演技ができるようになりたいから。
いまでも彼が身につけているものを見ると、まったく頓着がなくて、“何にお金使ってるの?”って思いますよ」(鈴木氏)
佐藤も鈴木氏も酒好きだが、飲んでも話題は演技のことばかりだという。
「7~8年前に24時間飲んでいたことがあるんですが、ヘベレケになって帰るまで話していたのは、芝居のことだけでした。あまり人に聞かせられない演技の話をよくしていますね。『彼の演技は認める』『あのシーンであの演技を選択するのはどうかねえ?』と。二朗がどんな人かといえば、本人も言っていますが“8歳児”。悪い言い方だと子供っぽい、でも純粋とも言えます。
彼は松田優作さんが好きで、『優作になりたい』みたいなことを言ったときには思わず『鏡見たら?』って返してしまいました(笑)」(同前)
※週刊ポスト2022年8月5・12日号