「ホストクラブを取り巻く状況はここ20年で大きく変化しました。特に最近のホストはオンラインが主戦場です。YouTubeやツイッターで動画や写真をアップし、お客さんになりそうな女性にメッセージを送る。
昔は、店に来てから『どのホストを指名しようかな』と選ぶのが主流でしたが、いまはSNSを見て、実際に会う前から『この人にしよう』と初回指名で来るパターンが多い。“会いに行けるアイドル”感覚でホストを楽しむ女性も多いです」
変化したのは店を取り巻く状況だけではない。ホストと女性たちの関係性も社会の変遷とともに大きく変わったと頼朝さんは続ける。
「以前、ホストクラブに通っていたのは、水商売の女性や有閑マダム、看護師さんなどある程度の社会経験を持つ人が多く、年齢層も10〜70代と幅広かった。彼女たちの多くは“夜遊び”自体の経験がないため、ホストたちがリードして、どうやって楽しむかをレクチャーするのが一般的だった。
しかしいまのお客さんのメインは何といっても20代前半の“パパ活女子”。月に何百万円も稼ぐ彼女たちは『大金を使うんだから』とホストたちへの要求も高く、自分たちの好きなように遊ぶし、そのことに誇りを持っている。ホストクラブの“主役”が男性から女性に移ったように感じます」
確かに、筆者が取材した女性たちは皆、誇らしげに使った金額を明かし、なかには「ホス狂いは“ブランド”です」と言い切る女の子もいた。
「昔はお金を出してホストに接客してもらうのは『モテない』『ダサい』女性がする行為であり、恥ずかしいことだった。しかしいま、つぎ込むお金があるということは、『自分には大金を稼ぐ能力や価値がある』ということの証明になり、誇るべきことだと価値観が変わってきている。利益の追求を第一に考える資本主義が浸透しきったことの象徴とも感じます。
とはいえ、使ってはいけないお金に手をつけたり、生活が破綻しても通うことをやめられなかったりする状況は、精神医学では“薬物なき依存症”と呼び、治療を必要とします。日常生活に支障をきたすようであればカウンセリングを受けることも検討すべきです」(片田さん)
彼女たちがすべてを捧げた先に待っているものは、いったい何なのだろうか──。
●宇都宮直子(ノンフィクションライター)
※女性セブン2022年8月11日号