ホストは会いに行けるアイドルだという
「こんなときだからこそ、指名しているホストを“助けてあげなきゃ”と思っています。普段なら、私より大金を使うお客さんもきれいな女の子もいっぱいいる。だけど、彼女たちは感染が怖くてお店に来なくなった。そんな中で私がいつもよりたくさんお店に行けば、ホストにとって特別な存在になれるんです。
彼から『頑張ってくれてありがとう。こういう大変なときに助けてくれるのが“本当の姫(女性客のこと)”なんだよ』と言われたときには涙が出ました」
精神科医の片田珠美さんは、彼女たちの献身の背景には自己肯定感への渇望があると分析する。
「SNSが普及し、自分より満たされた人の生活をいくらでものぞき見ることができる現代において、若い女性たちは、たとえ衣食住足りて何不自由なく生活できていても、満足感を得にくく、自分を強く肯定してくれる存在を求めている。そんな中で、『自分の存在がホストを支えている』『私の努力によって彼がナンバーワンになる』というホストクラブのシステムは強い達成感や勝利感を得るのにうってつけです」
“こんなときだからこそ……”という姫たちの努力により、コロナ禍でかえって収益が上がったホストクラブさえあったという。
ホストは“会いに行けるアイドル”
「無人島にひとり、連れて行くなら夫。だけどいま恋しているのはホスト」
はにかみながらそう話す40代の既婚女性・いちごチェリーさん(仮名)もまた、コロナ禍を機にホストにはまったひとりだ。
「それまでは友人のつきあいやSNSを介して知り合ったホストの店にたまに行く程度だったのですが、緊急事態宣言を機に、『オンラインホスト』を始める店が増えたことがきっかけで、つぎ込むお金が爆発的に増えました。
そもそも、家には夫もいるから頻繁に夜遊びできなかったけれど、オンラインなら夫が寝た後、30分だけでも“推し”のホストと会話が楽しめる。画面越しにかっこいいホストくんと家飲みできるのがうれしくて、気がついたら毎日、課金するようになっていました。そのときの楽しさが忘れられず、緊急事態宣言が明けてから、店にも頻繁に足を運ぶようになったんです」
リアル店舗で対面した生身の“推し”は予想以上に魅力的だった。いちごチェリーさんは彼にはまり、店に通いつめ、初対面から1年足らずで1000万円以上をつぎ込んだ。2000年代に“カリスマホスト”としてバラエティー番組にも多数出演し、ホストブームを牽引した頼朝さんは「令和のホスト」についてこう話す。