そもそもCDプレイヤーがない
サブスクによって埋もれていた曲が脚光を浴びた例もある。2020年12月、松原みきの『真夜中のドア~stay with me』がSpotifyのグローバルバイラルチャートで18日連続世界1位を記録した。1979年に発売され、松原自身は2004年に44歳の若さでこの世を去っていたが、天国で嬉しい知らせを聞いたに違いない。
「山下さんは本当に素敵な曲ばかり生み出していますから、その曲には未来永劫残ってほしい。でも、サブスクを解禁しないと、数十年後には誰も知らない曲もたくさん出てくるかもしれない。残念ながら、今の時点でCDを聞く人は相当減っているのが実情です」
CDの売り上げは1998年をピークに下がり、2010年代前半にはAKB48などが握手券付きで販売したことでその減少スピードを抑えてきたが、近年は最盛期と比べると半分以下に落ち込んでいる。そしてCDを補うように、サブスクの売り上げが伸びている。
「今もレコード会社の年配の方たちの中には、まだまだCDを売ろうとして、サブスクを否定する人たちもいます。確かにCDのほうが利幅が大きいので、その気持ちはわからなくもない。でも、今の10代や20代はCDプレイヤー持っている人自体が少ない。家電量販店に行っても、CDプレイヤーやコンポの売り場面積がかなり小さくなっている。
CDプレイヤーのついていない新車も結構あります。若者は車に乗らない人が増えているけど、40代以上は車好きがまだまだ多いし、CDを聴く層でもある。でも、CDプレイヤーがないとなれば、徐々にCDから遠ざかる。普通に生活をしていて、世の中がCDを求めていないことを実感しています。山下さんクラスの大物がサブスクを解禁してくれると、他のミュージシャンへの波及効果もあるので、業界を盛り上げる意味でも挑戦していただけるとありがたいのですが……」
山下は7月下旬に新型コロナウイルス感染が判明し、コンサートの開催が見送られているが、現在は快方に向かっているという。8月1日には矢沢永吉(72)がサブスクを全解禁した。名曲の数々が永久に残るように、山下がサブスク解禁という決断を下す日は来るか。