事件に発展してしまった
刺されたことで音信不通だった兄と姉と再会できた
「はじめまして」といって現れた琉月さんは、折れそうなほど線が細く、表情もまだあどけない。服装もダメージジーンズにシャツというラフなもので、SNSでのアグレッシブな姿からは想像がつかないほどに幼く見えた。
高岡とは、彼女の店に琉月さんが遊びにいったことで知りあったという。当時、琉月さんは「それからお店に来てくれるようになって、多いときには月に100万円以上、使ってくれることもありました。あのコのなかにも僕を刺す理由があったと思う。ホストをはじめて1年足らずの僕が営業成績を出せたのはやはり彼女のおかげでもあった。そういった彼女の“頑張り”に、僕が報いていなかったのかもしれません……」と語っていた。
肝臓を深く刺され、5日間意識が戻らなかったという琉月さんは「助かる確率は2割だった」という。病み上がりのためなのか、しゃべる様子も、どこかたどたどしく、その姿は痛々しくさえあった。
そんな状態にもかかわらず、店に復帰した理由について聞くと、こんな答えが返ってきた。
「小学生のときに一家離散して以来、施設で育って来た自分にはこの店しか居場所がないんです。入院中も先輩ホストが病院に来て、『お前がお酒を飲めない分、俺たちが飲んでやるから』って励ましてくれて……それでまた、ここで働きたいと思ったんです」
事件をきっかけに琉月さんの人生には、大きな変化が訪れていた。
「病院に運び込まれたあと、連絡先が分からなかったことから、警察が肉親を捜してくれたんです。それで、音信不通だった兄と姉に会うことができました。5年ぶりに会った2人は、全然変わってなくって“生きててよかった”って、言ってくれた。きっかけは事件でしたが、兄姉と連絡がとれるようになったのは、すごく嬉しいことでした」
そう言ってはにかんだ琉月さんは、「ハタチの男の子」(※当時)にしか見えなかった。