韓国政府を訴えた経緯を語るタンさん(写真/村山康文)

タンさんに、韓国政府を訴えた経緯を聞いた(2021年、写真/村山康文)

「私が2015年6月に初めてタンさんを訪ねて事件に関する話を聞いた時、彼女はふたりの孫娘を前に『孫たちには絶対に私と同じ思いをさせたくない』と語りました。提訴後の2021年5月にビデオ通話で取材した際には、『フォンニ村・フォンニャット村で亡くなった74名の魂を背負い、これからも戦っていく』と力強く答えてくれました。

 しかし、現在に至るまで、韓国政府は従来の態度を変えていません。タンさんの裁判では2021年11月に元韓国軍兵士が証言台に立ち『当時、韓国軍は民間人とみられる現地人を大量に殺害した』と話しましたが、韓国政府は『証言が一貫していない』と受け入れを拒否。

 タンさんのおじ・チョイさんの証言内容に対しても、韓国政府側は『韓国軍によって被害を受けた事実が十分に立証されていない』、『米軍に対抗した南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)が心理戦のために韓国軍に偽装し、民間人を攻撃した可能性がある。また、韓国軍が民間人を殺害したとしても、交戦状態においてフォンニ村・フォンニャット村の住民を敵と誤認した可能性を排除できない』と責任を否認する立場をとっています。

 しかし、この事件は米軍との共同行動中に起きたものだったため、米側にも資料が残されました。2000年6月に米公文書館の機密指定が解除された事件の関連資料で明らかになったのは、事件直後に米側が独自に現地を調査して報告書をまとめていたこと、それに基づき米韓両軍の現地トップが書簡を交わしていたことなどです。

 事件発生の数か月後、調査により虐殺事件をはっきり認識した米軍側から『韓国軍による調査・真相究明』を求められた駐越韓国軍司令部の長官は、その後、〈大量虐殺は陰謀行為〉と韓国軍による虐殺を否定する内容を米側に返しています。当時から現在まで50年以上、韓国政府の姿勢は変わっていないのです」

 韓国の司法が“歴史のタブー”にどんな裁定を下すのか。審理の行方が注目されている。

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